前回は、泡盛に付随して独自に発達してきた酒器として「カラカラ」「抱瓶(だちびん)」について述べたが、まだ幾つかの酒器に泡盛との固有性が見られる。

 まず「チブグァー」はおそらく世界一小さい盃(さかずき)であろう。私はこれまで世界中の酒器を見てきたが、泡盛飲酒専用の盃であるチブグァーより小さいものは知らない。手のひらに握り隠すことができるほど小さく、最小のものでは口径2センチメートル、高さ2・5センチメートル程で、その容量は3~5ccぐらいではあるまいか。こんな小さな盃で酒を飲めというのではなく、貴重な古酒なのだからじっくりと少しずつその香味を味わって、舐(な)めるようにして泡盛を楽しめ、というものなのである。この酒器も、琉球人特有の粋さと酒器を観賞する美的感覚がもたらした器だと私は思っている。

 家庭に納められている泡盛貯蔵用の壺(つぼ)や甕(かめ)も、独特の風格を持っている。その大半は壺屋焼で、釉(うわぐすり)のかかっていない荒焼である。すんなりとしたスマートなものから、やさしい曲線で作られた豊満なものまでさまざまあって見る者を大いに楽しませてくれる。

 荒焼なので、壺に泡盛を入れると、壺の内側の肌に露出している金属イオン(マンガン、マグネシウム、カリウム、カルシウム、鉄、リンなど)と泡盛の成分が接触し、そこで物理化学的熟成反応が起こり、酒は壺の中で一層マイルドな味へと育っていくのである。世界中のほとんどの蒸留酒は木の樽(たる)に貯蔵する中、ひとり泡盛はこのような荒焼の土器に入れるのは珍しく、しかも家庭で、貯蔵中でも確実に熟成していくというのは、他に例のない固有の技法である。琉球のかなり多くの家庭には、昔から泡盛貯蔵用の甕や壺が囲ってあって、そこで酒を育てて楽しんでいく風景は、世界中どこへ行っても見られない事である。

 「チョーカー」は泡盛を楽しむのに最もふさわしい酒器である。把(と)っ手が付いた煎茶用の急須の形をしていて、泡盛をチブグァーのような小さい盃に注ぐのに使われる。鹿児島には、これによく似た「チョカ」という酒器があるが、これは琉球から泡盛が伝えられたとき一緒に渡ったというのが定説である。

 「ヤーシグヮー」は椰子(やし)の実でつくられた庶民の携帯用泡盛酒器で、別名を「椰子徳利(とっくり)」という。昔は浜辺に流れ着いた実を拾ってきて作ったという。実の上部に穴を開け、そこに金属製の口を付け、胴部には棕櫚(しゅろ)の縄や藤蔓(ふじつる)を巻く。素朴さの中に美術性をも感じさせる、南国ならではの酒器である。

 市販されている泡盛の瓶に貼られているラベルのカラフルさとデザインのユニークさは、太陽のぎらつく南の国さながらの個性を感じさせるものである。構成する多彩の主要なものは原色で、赤、青、黄の3色が基本となっている。そこの中央に、黒色の太字で銘柄が鎮座しているのはなかなか迫力がある。青は海と空、赤と黄は太陽を現しているのかもしれない。

 そのカラフルさと派手過ぎるほどのラベルは、南国のぎらつく太陽が紺碧(こんぺき)の海を照らし、やがて夕日を迎える琉球の一日を現しているようでまぶしいほどだ。とても泡盛に似合った世界一美しいラベルである。

 次回からはいよいよ琉球料理に入る。