ほとんど予備知識を持たずに映画館の席に座った。幼少期のトラウマで声の出せない女性が、謎の半魚人と心を通わせる純愛ファンタジー。つつましく切ない物語に引き込まれたが、見終えてまず思ったのは「よくぞ米アカデミー作品賞を取ったな」

▼どんなに優れていても怪物映画は最高の賞を取れない。そもそも娯楽性の高い作品は避けられる。映画「シェイプ・オブ・ウォーター」は暗黙の掟を覆した

▼背景に、選考の投票権を持つ映画芸術科学アカデミー会員の変化が影響してはいまいか。白人男性が牛耳ってきたが、昨年の新会員候補774人のうち39%は女性、30%が有色人種。2年後までに少数派(マイノリティー)は2倍になる

▼作品に登場するのは半魚人、会話が不自由な人、同性愛者、アフリカ系米国人。言葉を超えたロマンスが縦軸としたら、横軸に少数派への深い愛情が貫かれているように思える

▼半魚人を痛めつける役として、こわもての白人男性も出てくる。組織に忠実なマイホームパパ。多数派(マジョリティー)と言っていいだろう。彼なりの正義感で奮闘するが、組織にとって都合が悪くなった途端、無情にも切り捨てられる

▼多数派・少数派を決めているのは一体何か。権力者か、時代か、人の心にすみつく常識か。そのどれも、いずれ移りゆく。(西江昭吾)