国家の戦争責任を問う住民による闘いの記録である。

高文研・5400円 /ずけやま・しげる 1943年、南洋諸島パラオ・コロール島生まれ。弁護士。南洋戦・フィリピン戦被害・国家賠償訴訟弁護団長

 「アジア太平洋戦争」と呼ばれる先の大戦は、その名の通りハワイ開戦を起点として太平洋に散らばる南洋諸島をむごい地上戦へと巻き込んだ。筆者であり、「南洋戦・フィリピン戦」国賠訴訟弁護団長の瑞慶山茂さんが、45人の原告と36人の弁護団と共に、南洋諸島から沖縄へと連なる「玉砕」「集団自決」、日本軍兵士による住民虐殺の実態を暴く。

 太平洋の小さな島々で繰り広げられた「南洋戦-」は、沖縄戦と同じように一般住民を巻き込んだ戦闘が数カ月にわたって続いた。訴訟の過程では、幼い頃の壮絶な記憶により、精神科診療を受けた29人の原告のうち28人が「戦時・戦場体験に起因する外傷性精神障害」を発症していることも明らかになった。

 原告の体験にある「壕(ごう)の追い出し」や「食糧強奪」など日本軍兵士による住民への暴力は、沖縄戦の体験とうり二つだ。瑞慶山さんは「家永教科書検定事件の最高裁判決は沖縄戦被害が本土の他の戦争とは明らかに異なるという被害事実を認定している。沖縄戦と同様の地上戦が闘われた南洋戦の被害においてもこれらの事実認定は必要だ」と、同訴訟には戦争の実相を解明する側面もあると指摘する。

 こうした先の大戦における日本国民の戦死者は310万人と推定され、うち軍人・軍属230万人、一般民間被害者が80万人(本書99ページ)。訴訟は、国家による戦後補償は、遺族による闘いの結果ようやく日本軍兵士とその家族に実施されたが、戦後70年以上が経過しても民間被害者へはほとんどなされていないことへの異議申し立てである。

 国家の真の謝罪こそが恒久平和への道と信じる原告らはすでに高齢だ。567ページにも及ぶ詳細な訴訟記録には、後世へ確実に平和を渡すため、残された命をかけて戦後補償を勝ち取ろうとする一人一人の願いが込められている。(沖縄タイムス論説委員・黒島美奈子)