2011年から17年までの7年間のあいだに詠まれた431首を「編年順」に収録した歌集は、一種の「日録」といっていいものになっている。しかしその日録は、たとえば親族の死や近況を詠んだもの、その他例えば「歩むこと叶いし朝は青空を翔ける羽もつ雲雀となりぬ」といったような、昨日までとは異なり、今朝は歩けたという健常者には気づくこともない1日の始まりの心ときめくうれしさを詠んだ、暮らしの歌とは少なからず異なるものとなっていた。

歌集 島からの祈り(ながらみ書房・2700円)

 いわゆるごく普通の生活のあれこれを歌った歌が目立たないほどに、憤怒に貫かれた歌を集めたものになっていると言わざるをえないような、日々眼(め)の前を暗くする社会の動きに異議申し立てをした歌が並んでいる。そしてそれはいくつものことにむけられていて、随意にあげておけば「辺野古」であり「高江」であり、「オスプレイ」であり、「福島」であり、「九条」であり「摩文仁」であり「ひめゆり」であり、現政権によって強行採決されていったもろもろの法律に対するものであるといったことになろう。

 それらは、日々の新聞を手に取り、見出しのみを読んでいる多くのひとたちにとっても知らないものではない。しかし、多くの人が、もはや他人事(たにんごと)のように、あるいはすでに終わってしまったものとして、やりすごしはじめているようにみえるのに対し、例えば、辺野古を歌った一首「島人の辺野古へ辺野古へ馳せゆく日臥せるわが身は鳥にもなりて」によくあらわれているように、体調が許せば、すぐにでも飛んで行って、声を上げたい、そこにしっかり踏みとどまり、一歩も退くまい、と硬く心に誓っている人の姿がみえる、そういう歌が「日録」のように歌集をいろどっているのである。

 歌の重要な要素の一つに、リズムがあげられる。その点については難点もあろうが、それを越えて、詠み手の憤りを、読者もわが心とすることだろう。(仲程昌徳・元琉球大学教員)

 【著者プロフィール】たましろ・ひろこ 1945年大阪府生まれ。「紅短歌会」「未来」「日本歌人クラブ」会員