ひめゆり平和祈念資料館(糸満市伊原)に、戦争体験のない戦後世代の館長が初めて誕生した。

 前館長の島袋淑子さん(90)からバトンを受け取り、1日付で館長に就いたのは普天間朝佳さん(58)。

 歴代館長はこれまで元引率教師や元学徒ら沖縄戦の直接体験者だった。資料館は1989年に開館。普天間さんは、当初からの職員だ。

 戦後世代の館長への交代は「語り部」の要が事実上、直接体験者から非体験者に移ることを意味しよう。

 沖縄戦を体験した元学徒の証言者は当初の27人から今では8人に。

 資料館では2015年に元学徒(証言員)から直接体験を聴く講話が終了。証言員を外部に派遣する館外講話も一足先に終わった。

 元学徒が一線から退くことを見越し、非体験者の若い「説明員」の養成に力を入れるとともに、海外の平和博物館を訪ねるなど、継承の在り方の学びを深めてきた。

 非体験者の説明は元学徒の証言映像も活用し、実際は両者の共同作業といえよう。

 生き残った元学徒の消えない罪悪感などを説明員が補い、より実相に近づいている側面もあるようだ。

 普天間さんは就任に当たり「戦争から遠くなっていく若者たちに、悲惨な記憶を橋渡しする重要な仕事」と語る。

 戦後世代の想像力を喚起して沖縄戦にどう向き合い、継承に取り組むか、新館長の手腕が問われそうだ。

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 資料館の活動は館内だけにとどまらない。15年にはひめゆり学徒隊の足跡を追体験する一般向けのバスツアーを20年ぶりに実施。17年には糸満市摩文仁の平和祈念公園内に、沖縄戦当時にあった全21師範学校・中等学校の校名が刻まれた「全学徒隊の碑」が建立された。きっかけは資料館が1999年に企画した「沖縄戦の全学徒たち展」だった。

 館内外の活動にもかかわらず、平和教育は曲がり角に差し掛かっているのも事実だ。

 昨年9月、集団自決のあった読谷村波平のチビチリガマが少年らに荒らされた。

 高校生のアンケート(2015年)で沖縄戦を学ぶことは「大切」と答えた生徒が94・1%と過去最高となる一方、身近で沖縄戦を話してくれる人について「いない」が「いる」を上回った。教員も非体験者。祖父母もそうかもしれない。継承がうまくいっていないことをうかがわせる。

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 資料館を訪れる県内小中高校も1995年度をピークに2016年度は72校と半減した。資料館と学校の連携を密接にする必要がある。

 島袋さんは、退任と同時に出版した著著『ひめゆりとともに』の中で、説明員として育った次世代の若い人たちに後を託し、「この資料館が平和の砦(とりで)になって欲(ほ)しい、そして一番大事な命について考える場所になって欲しいと願っています」と結んでいる。

 二度と戦争を起こさないために、足元の歴史を学んで記憶の風化を押しとどめる。非体験者から非体験者へリレーする「継承の現場」にしたいものである。