福岡でラーメン店に入ってカウンターが1席ずつ板で仕切られていることに驚いた。目の前には小窓。ラーメンが来た後はそこにもすだれが下りて半密室になる。名付けて「味集中カウンター」

▼確かにおしゃべりも人物観察もできないから前を向いて味に集中するほかない。鶏舎に詰め込まれた鶏のような気分だが、味付けや麺の硬さは細かく好みに応じてくれる

▼スーパーの棚には「1人鍋」用のスープ。関東では「おひとりさま専用」のカラオケチェーンも登場したという。他の人に気兼ねすることなく楽しむ「個の時代」のスタイルなのだろう

▼本部半島では、1人乗りの電気自動車を貸し出すサービスが始まった。大型バスに乗った観光地周遊からレンタカー、そして1人乗りへ。観光の世界でも個別化が進む

▼グループ旅行で来ても、ここでは一人一人がハンドルを握り、主役になれる。小さいから脇道に入りやすく、ドアがないからちょっと下車して寄り道もしやすい。担当者は「点と点(観光地)ではなく線(移動)を楽しむ乗り物」と説明する

▼大量消費時代の万人受けする定番観光地だけでなく、集落のたたずまいや穴場スポットなど身近なものが観光資源になり得る。一方で、生活の場にどこまでも立ち入ってもらっては困る。線引きがますます重要になるはずだ。(阿部岳)