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  • 辺野古訴訟の和解勧告は司法が「政治の貧困」を指摘しているのでは
  • 和解協議しながら国が工事を進め既成事実を重ねるなら意味はない
  • 宜野湾市長選の現職当選、政府・県の協議会、和解勧告の3つは偶然か

 名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て承認の取り消しを違法として、国が翁長雄志知事を相手に起こした代執行訴訟の第3回口頭弁論が福岡高裁那覇支部で開かれた。

第3回口頭弁論の開廷を待つ翁長雄志知事(左)=29日午後、福岡高等裁判所那覇支部(代表撮影)

 多見谷寿郎裁判長は閉廷間際に国と県に和解を勧告した。国、県いずれにとっても想定外の展開である。

 行政事件の訴訟で和解勧告は極めて異例である。裁判所はなぜ、このタイミングで和解を勧告したのだろうか。

 県によると、裁判所が示したのは「根本的な解決案」と「暫定的な解決案」の2案。裁判所の意向で2案の具体的な内容は明らかになっておらず、軽々に論じることは控えたいが、裁判所は国が代執行訴訟を持ち込んだことに疑問を感じているのではないか。

 2000年4月に施行された地方分権一括法で、国と自治体の関係は「上下・主従」から「対等・協力」に改められた。地方自治法上の代執行は、これ以外の措置で是正を図ることが困難な場合にのみ適用されるが、裁判所はその要件が満たされていないと考えているのではないか。

 1995年に大田昌秀知事が国に訴えられた代理署名訴訟で裁判長を務めた大塚一郎氏は昨年11月、本紙のインタビューに「国と県の対立の根源は沖縄に集中する米軍基地であり、法律では解決できない」と語り、国と県の話し合いを促している。多見谷裁判長の念頭にも同じ思いがあるのかもしれない。

 和解勧告は「政治の貧困」を司法が問わず語りに指摘しているようにみえる。

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 新基地建設をめぐり、県と国の主張は真っ向から対立している。和解はそれぞれが妥協点を探ることであるから、双方が和解協議に応じ、勧告に従う可能性は極めて低い。

 国との対話の道を県の方から閉ざすべきではないが、仮に県が和解協議に入ることがあったとしても、「辺野古新基地は造らせない」という原則から外れることがあってはならない。

 新基地建設工事を止めることが和解協議の大前提である。和解協議をする一方で、国が建設工事を進め、既成事実を積み重ねるのなら話し合いの意味はない。

 宜野湾市長選で現職が当選した。直後に政府と県の協議会が開かれ、司法の場では和解勧告が出された。三つの動きが同時期に表面化したのは単なる偶然なのだろうか。

 この際、県は原則的立場を確認すると同時に、状況の変化を受けて今後、どのように対応していくか、慎重な検討が迫られている。

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 県は裁判所が示した和解2案をできるだけ早く県民に明らかにしてもらいたい。透明性を確保するのが重要だ。

 代執行訴訟は翁長知事への本人尋問を2月15日、稲嶺進名護市長への証人尋問を29日に行い結審する。3月にも判決が言い渡される。裁判所が知事と市長の尋問を実施する前に、結審の日と和解勧告を出したということはいったいどういうことだろうか。

 判決を出す前にあらゆる手だてを尽くしたと自己アピールするための和解勧告であってはならない。