5月を過ぎた夏場が最盛期とされる沖縄の漁業は、その入り口の季節を迎えている。読谷村の都屋漁港沖にある県内最大の定置網にかかる魚は次第に増え、大漁前夜の活気だ

▼漁師に聞くとタマンは年2回ほど大漁が訪れる。1回目が3月中旬にあり、4キロを超す大物が連日競りに並んだ。4月に入るとミジュンが久しぶりに1日2トンを超えた

▼定置網漁は魚群の行く手を遮るように工夫された網によって誘導し、1カ所に集めて捕る漁法である。読谷では港から2・5キロ沖合、船で10分ほどの漁場に設置される

▼国内では戦後、沖合や遠洋での漁業が飛躍的に伸びたが、1970年代に燃料代が高騰すると定置網が省エネ漁法として見直された。読谷では全国に少し遅れて80年ごろ、回遊魚などが集まる漁場に網が置かれた

▼シャチ以外はほとんど入る-。先の漁師がこう表現するように、この好漁場で捕れるのは豊富な食用に限らない。沖縄美ら海水族館のジンベエザメは、迷い込んだ“読谷出身”が多い。沖合のいけすで飼われ、近くでダイビングを体験できるのは高知県土佐清水市と全国で2カ所しかない

▼私たちの身近な場には海の幸と観光漁業の可能性が広がっている。捕れたてを船上で味わったグルクマーの刺し身は脂がのっていて格別だった。(溝井洋輔)