日銀がまたも思い切った金融緩和策を打ち出した。

 第1弾は2013年4月に打ち出した「量的・質的金融緩和」、第2弾は14年10月の「追加緩和」、第3弾が今回の「マイナス金利導入」である。

 民間の金融機関が日本銀行の当座預金にお金を預ける際、これまでは預けた分の金利を日銀から受け取っていたが、16日から、その一部に「マイナス0・1%」の金利が導入される。

 民間の金融機関は、預金量に応じて日銀に金利分の「手数料」を支払うことになる。預けたら損をするという国内では例のない金利政策だ。

 日銀に預けてある民間銀行の大量の資金を融資や投資などに振り向け、実体経済の活性化を図る狙いがある。

 それにしても、効果が不透明で副作用が伴う劇薬を注入するのはなぜか。

 黒田日銀のこれまでの「異次元緩和策」は、株価を押し上げ、円安によって輸出企業などの企業収益を好転させたが、個人消費は回復せず、物価上昇率2%の目標達成のめどもたっていない。

 ここに来て中国など新興国経済の減速や原油安などの影響でデフレ脱却に暗雲が漂い始めてきた。

 金融緩和策の第3弾は、出口の見えないトンネルの中で、カンフル剤を打ち続けるのに似ている。1月29日の金融政策決定会合で、総裁、副総裁(2人)を含む9人の政策委員のうち賛成5、反対4の賛成多数で決まったということは、政策の手詰まり感を示したものといえよう。

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 マイナス金利は、民間銀行が日銀に預けているお金が対象で、一般の銀行預金を対象にしたものではない。ただし、別の形で暮らしに影響を与えることになりそうだ。

 民間銀行が潤沢な手持ち資金を住宅ローンの貸し出しに回せば、競争が激化し、金利が低下する可能性がある。

 その反面、民間の銀行にとっては市場金利の低下で貸し出しの利ざやが縮小し、収益を圧迫することになりそうだ。金融機関は中小企業向けの融資を引き締めるおそれがある。

 潤沢に供給される金が不動産に向かえば不動産バブルを誘発する懸念がある。

 日銀にため込んであったお金が企業や個人に貸し出され、経済の好循環が生まれる、という想定は、実現可能な想定だろうか。

 将来への期待よりも不安が大きければ、企業や個人の投資意欲、消費意欲はなえる。現状がそうだ。

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 物価上昇率2%の達成時期について日銀は、「16年度後半ごろ」という目標をあらため、「17年度前半ごろ」に先送りした。

 金融緩和策の恩恵は地方に届いているとはいえない。というよりも、金融緩和策によって経済の持続的な底上げを図ることはできない。

 異次元の緩和策だけが脚光を浴びる安倍政権の経済政策アベノミクスは、大きな曲がり角に立っている。

 「黒田バズーカ」と形容される日銀の金融緩和策には、出口の見えない不安が以前にも増して膨らむ。