名護市辺野古の新基地建設をめぐって県は1日、国を相手に新たな訴訟を福岡高裁那覇支部に起こした。

 翁長雄志知事による辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消しの効力を止めた石井啓一国土交通相の決定の取り消しを求めている。

 国が知事の承認取り消しを違法と訴えた「代執行訴訟」、知事の承認取り消しの効力を停止した国の決定は違法だとして県が訴えた「抗告訴訟」。辺野古移設に関する法廷闘争はこれが三つ目である。県と国が互いに提訴する異例の事態だ。

 県と国の司法の場での対立は、昨年10月、翁長氏が辺野古の埋め立て承認を取り消したことから始まった。国交相は、行政不服審査法に基づく沖縄防衛局からの審査請求を受け、取り消しの効力停止を決定。翁長氏はこれを不服として、国の第三者機関である国地方係争処理委員会へ審査を申し出た。係争委が12月、実質審査に入らないまま却下したため、新たな訴訟に踏み切った。

 県は訴状で、行政不服審査制度は一般国民の権利救済を目的としており、国の機関である沖縄防衛局は審査請求できない、と主張する。適格性を欠いた審査請求に対する国交相の効力停止決定は違法であり、従って県の審査申し出を却下した係争委の判断は誤りとも指摘する。

 新たな訴訟は抗告訴訟と論点が重なる部分があるが、国による「行政権の乱用」や国と地方のあり方を問う重要な裁判である。

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 そもそも行政不服審査法は私人の救済を目的とする法律で、国が国に審査を請求するのは客観性・公正性の面からも問題がある。

 知事の埋め立て承認取り消しの効力を止める執行停止を決定する一方で、取り消しが有効であることを前提とした代執行手続きに踏み切ったことも矛盾している。 

 法に基づき公正な解決を図る機会でもあった係争委が、本質的な議論に入る前に知事の申し出を門前払いとしたのは、委員会の役割を自ら狭めるものだ。

 一連の国の対応が仮に正しいとするのなら、沖縄県は後ろ手に縛られた状態で、公有水面埋め立て承認手続きが適切だったかの判断もできず、地方自治体に認められているさまざまな権限も奪われたことになる。

 これは公権力の乱用であり、改正地方自治法にも反する。

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 係争委は、国と地方の関係が「上下」から「対等」に改められた地方分権一括法により、2000年に設置された。しかしこれまで地方自治体が国の関与に対し審査を申し出たのはわずか3件。そのうち決定を不服として高裁に提訴するのは今回が初めてである。

 日米安保条約に基づく米軍の基地建設をめぐる初めての事案でもある。係争委が判断を避けた以上、高裁は県が訴える「国の違法な関与」について、実質審理による判断を示すべきだ。

 行政権の乱用をチェックするのも司法の重要な役割である。