2016年5月に一度の押収量としては国内最大の覚醒剤約600キロ(末端価格約417億円)が台湾経由で沖縄県内に密輸された事件で、ヨットの船長が船内に拳銃を隠し持っていたことが今年2月、新たに発覚した。密輸事件から約1年9カ月。船長が自首するまで、押収したヨット内の拳銃は未発見のままだった。捜査内部からは「(拳銃が)第三者に流通する危険性は十分にあった」と、当時の第11管区海上保安本部の初動捜査を問題視する声も上がる。(社会部・新垣卓也、国吉聡志)

覚醒剤密輸に使われ、押収後に陸揚げされたヨット。船内から拳銃と実弾が見つかった=本島中部

■自首で発覚

 船長らヨットの乗員計6人は16年5月10日ごろ、那覇ふ頭に入港した。11管は当初、麻薬のケタミンを所持したとして麻薬取締法違反容疑で逮捕。約1週間後、船内に詰め込まれた大量の覚醒剤が見つかり、11管や県警などの合同捜査本部が6人を覚せい剤取締法違反などの容疑で再逮捕した。

 懲役25年の一審判決を受けた船長は今年2月9日の控訴後、捜査機関へ船内に自動装填(そうてん)式拳銃と実弾を隠していたと自首。県警が船長立ち会いの下、供述通りヨット内から拳銃を押収し、銃刀法違反容疑を固めた。

■公判に影響

 船長は、密輸発覚から2年近くがたって自首した理由について「他人に使用されることを恐れた」などと供述しているという。

 公判で無罪を訴えた船長の弁護人は「11管の捜索時に拳銃が発見されていたら、無罪主張は難しかっただろう」と打ち明け「船長は非合法的に銃を所持でき、(覚醒剤密輸の)違法行為に加担していたとの見方もできたはずだ」と指摘する。

 密輸の背景に、国内暴力団など組織が関与した可能性も危惧される。しかし、押収されたヨットは少なくとも1年以上、陸揚げされた状態で本島中部の港に保管されたままだった。

 11管は「拳銃は船内の配管部に巧妙に隠匿されていたため、発見には至らなかった」とコメントしたが、ある県警幹部は「拳銃の隠匿を知る者によって県内に流通する可能性があったのは否定できない」と吐露する。

 ほかの幹部は「巨額の取引に関わる密輸で、護身用に武器を持っていたとみるのは捜査の常識だ」と指摘。県内で覚醒剤の密輸が過去最多を更新する中、「捜査機関が連携し、より徹底した捜査が求められる」と強調した。