名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立て承認取り消しを違法として、国が翁長雄志知事を相手に起こした代執行訴訟で、福岡高裁那覇支部(多見谷寿郎裁判長)が国と県に勧告した二つの和解案の概要が取材によって明らかになった。

 行政訴訟で裁判所が和解を勧告するのは極めてまれで、国に不利な判決が想定される場合に多い、と法律の専門家は指摘する。

 代執行訴訟に至るまでの国の手法をみても、際だったのがその強引さだ。

 石井啓一国土交通相は昨年10月、沖縄防衛局が行政不服審査法に基づき申し立てていた翁長知事による埋め立て承認取り消しの効力を停止する決定をした。

 これで辺野古の埋め立て工事が再開できるようになったにもかかわらず、政府は同じ日の閣議で、今度は地方自治法に基づき代執行手続きに入ることを決めた。

 代執行の要件は(1)知事の承認取り消し処分が違法である(2)他の方法では是正を図ることが困難である(3)知事の処分を放置することが著しく公益を害することが明らかである-場合に限られる。

 これまでの口頭弁論で多見谷裁判長が「(代執行の)他に方法はないのか」などと国側代理人に問いただす場面があった。代執行の要件を満たしているかどうか、疑問を感じていたのではないか。

 翁長知事の埋め立て承認取り消しに対し国は違法確認訴訟などを起こすことができたにもかかわらず、一足飛びに代執行訴訟を提起したことに裁判所が疑義を持っている可能性があるということだ。

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 裁判所が示した和解2案は「根本的な解決案」と「暫定的な解決案」である。

 「根本的な解決案」は県が埋め立て承認取り消しを撤回し、新基地を建設した上で国は30年以内の返還を米国に求めるか、軍民共用にするかを交渉する、との内容である。

 この和解案を裁判所が「根本的な解決案」と呼ぶことに著しい違和感がある。

 新基地を造ることを前提にしており、翁長知事が民意に基づきあらゆる手段で新基地建設を阻止すると表明していることに反する。

 「30年」の根拠は何なのか。返還や軍民共用を国が米国と交渉するという。とてものめる案ではない。

 「暫定的な解決案」は、国が代執行訴訟を取り下げて工事を止め、県と再協議する。再協議がまとまらなければ、翁長知事の埋め立て承認取り消しに対し、国があらためて違法確認訴訟を起こすことを促す内容だ。違法確認訴訟でも国と県の対立構図は変わらないが、裁判所がやはり国の代執行訴訟に疑問を持っていることがうかがえる。

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 県と国の対話を否定するものではない。

 だが、辺野古新基地建設を拒否する県と、「辺野古が唯一の選択肢」とする国との間では、仮に「暫定的な解決案」で和解協議に入ったとしても溝を埋めることは困難だ。

 県は、和解案の全容を県民にオープンにしながら進めることが重要だ。