「同一労働同一賃金」が国会で与野党論戦の焦点の一つに上ってきた。

 安倍晋三首相は先月の施政方針演説で、1億総活躍社会へ挑戦するため、「同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と表明、正社員と非正規労働者の賃金格差の是正に取り組むことに意欲を示した。

 5日の衆院予算委員会でも「非正規の待遇改善は極めて重要だ。必要であれば法律を作っていくのは当然だ」と法制化に初めて言及した。

 同一労働同一賃金は、正社員であれ非正規であれ、同じ仕事をしていれば、同じ賃金をもらうべきだという考えである。もともと民主党など野党が訴えていた。

 一方で安倍政権は昨年9月、改正労働者派遣法を成立させ、派遣労働者の受け入れ期間の制限をなくすなど企業にとって派遣を使いやすいようにしている。同一労働同一賃金はこれと矛盾するような政策である。安倍首相の念頭には夏の参院選を見据え、非正規の待遇改善をアピールする思惑があるのではないか。

 企業が正社員を減らし、賃金を安く抑えられる非正規を増やした結果、非正規は増加、全労働者の約4割を占めるまでになっている。

 厚生労働省の2014年の調査では正社員の賃金が平均約32万円だったのに対し、非正規は約20万円。非正規の賃金は正社員の約6割にすぎない。さらに正社員は年功序列型賃金制度によって上昇していくものの、非正規はほとんどが横ばい。所得格差は広がっていくばかりだ。

 同一労働同一賃金は男女の賃金格差是正にもつながり、安倍首相には早急に実現に向け道筋をつけてもらいたい。

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 昨年9月に「同一労働同一賃金推進法」が成立している。民主、維新、生活の3党が共同提出した当初案は、同じ仕事をしていれば同水準の賃金がもらえる「職務に応じた待遇の均等の実現」だった。維新が与党との修正協議に応じたため、同じ仕事でも責任などに応じてバランスをとった待遇でもいいとする「均等および均衡の実現」に修正された。骨抜きである。

 同一労働同一賃金は欧米で定着している。仕事の内容で賃金が決まる「職務給」の賃金制度が一般的だからだ。

 しかし日本では正社員は残業や転勤、責任の重さが非正規と違い、似たような仕事でも単純に賃金を比べるのは難しいといわれる。勤続年数や経験などを重視した年功序列型賃金制度も根付いている。

 企業が雇用慣行を取り払うことができるかが同一労働同一賃金の導入の課題だ。

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 安倍首相は衆院予算委員会では「均等待遇」と言い、施政方針演説では「均衡待遇」と言っている。どちらをイメージしているのか具体像をはっきりさせてもらいたい。

 政府は5月中にとりまとめる「ニッポン1億総活躍プラン」の柱の一つにする方針だが、実効性のある同一労働同一賃金を盛り込むことができるかどうか。国会でも議論を深める必要がある。

 労働組合も春闘のテーマとして、同一労働同一賃金問題に向き合ってほしい。