「抗がん剤」2万5505円、「リウマチ治療薬」3万1629円、「インスリン製剤」6358円-。全日本民医連の全国保険薬局調査(2011年)で明らかになった患者の1回当たり薬代窓口負担額だ。全体平均は9972円。中でも無料・低額診療(無低診)患者は日々の生活に精いっぱいで医療費が捻出できず、重篤化して病院に足を運ぶケースも多い。薬代は高額になりがちという。

無料・低額診療患者の分納相談票などを整理する薬局員=那覇市古波蔵のこくら虹薬局

 生活保護を受ける寸前の世帯収入で生活する無低診患者にとって、薬代は時に生活が立ちゆかなくなるほどの出費になる。

 那覇市のこくら虹薬局では、薬代が払えない無低診患者に支払い相談を行った上、100円~千円単位の分納で対応するなど治療を続けられるよう独自に取り組む。ただ支払いが滞ることも多く、窓口で相談を受けた職員は法制度にジレンマを感じている。

 1回330円分の薬代も払えない50代男性は、工場の日雇い収入は月約10万円。肺うっ血で呼吸困難になり緊急受診し無低診で抗血栓薬などの処方箋が出された。同薬局に相談して支払いを待ってもらい、生活保護を受けた約1カ月後にまとめて計2170円を払うことができた。

 ただ、こうした事例は支援にうまくつなげられたケースで、同薬局の宮城幸枝薬局長は「無低診で処方箋を受け取っても、どうせ払えないと諦めて薬局に来ない患者もいる」と話す。

 実際、隣接する沖縄協同病院が12年4月から約1年半の間に発行した那覇市民分の処方箋274件のうち、60件は行方不明。一度は薬局で薬をもらっても、次回分は支払えないからとその後、診察そのものを控える患者もいると想定されるが、薬代が払えない潜在的な患者は「どれくらいか、実数は分からない」(同薬局)のが実情だ。

 投薬は治療の一環。診察を受けただけでは病状は悪化し、命に関わりかねない。宮城薬局長は「診察代より薬代が高額になることもあり、助成は急務だ。お金の切れ目が命の切れ目になりかねない。那覇市の助成制度は大変意義がある」と話した。

 【ことば】無料・低額診療(無低診)事業 経済的な理由から医療費の支払いが難しい世帯を対象に医療費の減額や全額免除を行う社会福祉法にのっとった事業。一方で薬代は自己負担が必要。都道府県の認可を受けた医療機関が独自の基準で対象世帯を決める。県内の無低診患者は2014年度で1892人いた。