重い心臓病を患い、渡米して心臓移植を待っていた翁長希羽ちゃん(1)=浦添市=の手術成功の知らせが届いた。家族や募金活動を担った「救う会」、多くの支援者と共に喜びたい。

 希羽ちゃんは現地時間の5日に9時間に及ぶ手術を受け、9日に胸の傷口を閉じる手術を受けた。経過は良好という。笑顔の帰国が待ち遠しい。

 手術の成功を受け両親は10日「1人のお子さんが亡くなられているという現実は、想像以上に重い。ドナーの方のご家族の分まで希羽にたくさんの愛情を注ぎ大切に育てていくことをお誓いしたい」とのコメントを発表した。

 希羽ちゃんの渡航移植費用は3億2千万円というとてつもない額だった。だが「救う会」が昨年9月に募金活動を始めると、多くの善意が寄せられ約5カ月で渡米が実現した。

 心臓移植の渡航費を県内の募金で賄ったケースは希羽ちゃんが4人目だ。費用は年々増え、15年前に比べると3倍近く膨らんでいる。

 医療保険が適用されないことや滞在費を考慮しても、これほどの高騰の理由は定かではないという。わが子の渡米移植を経験した親は「これ以上かかると募金も限界」と心配する。

 一つには、米国はもちろん、世界のどこの国でも臓器提供が足りないことが背後にあるとみられている。

 19歳で渡米移植を経験した県内の男性は「国内での移植が進まない現状が、命をお金でしか買えないような状況を生み出しているのでは」と話していた。

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 子どもの渡米移植の背景には、国内の深刻な臓器提供不足がある。

 2010年の改正臓器移植法施行後、脳死による臓器提供は増え、心臓停止後の臓器提供を含めた提供総数は11、12年に110人台で推移した。しかし13年以降70~80人台まで減っている。

 ただ、内閣府の調査では脳死になった際「臓器提供をしたい」との回答が43%に上り、家族として「脳死提供を承諾する」は39%だった。

 これらのデータは本人や家族の提供意思が、医療の現場に反映されていない可能性を示してはいないだろうか。両者のミスマッチを取り除く体制整備が必要だ。

 一方、18歳未満の臓器提供は昨年9月末現在9例にとどまっている。

 共同通信が昨年実施した全国調査で、病院の医師らが提供を検討したが、最終的に見送ったケースが59例に上ることが分かった。虐待がないという確認がとれないことが主な理由だ。判断を現場任せにしない、専門家の増員や公的機関との連携が急がれる。

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 子どもの死をなかなか受け入れられないという親の心情もある。家族のグリーフケアも一体の取り組みとして充実させてほしい。

 渡米移植に頼りきりでは子どもを救えない事態は目の前だ。移植・臓器提供をひとごとにしない覚悟で、一人一人が熟慮することも重要だろう。