北朝鮮は12日、日本人拉致問題の再調査を全面的に中止し、特別調査委員会を解体すると表明した。

 北朝鮮による核実験と事実上の長距離弾道ミサイル発射を受け、日本政府が10日、独自制裁の復活や、追加制裁を決めたことに対する報復措置である。

 北朝鮮籍を持つ人の原則入国禁止や全ての北朝鮮籍船舶の入港禁止を復活させた。

 さらに、訪朝した在日外国人の核・ミサイル技術者の再入国禁止や人道目的のための10万円以下を除く北朝鮮への送金禁止、北朝鮮に寄港した第三国籍船舶の入港禁止などを新たに追加した。

 日本の制裁に対抗して北朝鮮が拉致カードを使うのではないかとの見方が出ていたが、北朝鮮が「日本が約束を破り、挑発を仕掛けた」と言うに至っては、独り善がりで筋違いであるというほかない。

 非難されるべきは、制止を求める声に耳を貸さず国連安保理の制裁決議に違反した北朝鮮である。

 このままでは北朝鮮は国際社会の中で孤立を深めるばかりである。

 日朝両政府は2014年5月、スウェーデン・ストックホルムで北朝鮮が拉致問題を再調査することで合意した。

 合意に基づき、北朝鮮は14年7月、日本人拉致被害者らの再調査をする特別調査委員会を設置した。日本政府は見返りに人的往来など制裁の一部を解除した。

 拉致問題で日本政府は繰り返し報告を求めたが、当初目標としていた「1年めど」を過ぎても北朝鮮は報告を先延ばしするばかり。

 現在に至るまで調査結果の報告は何もない。北朝鮮の対応は不誠実極まりない。

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 北朝鮮による再調査の全面中止で、「ストックホルム合意」は事実上破棄され、拉致問題の解決はますます困難になったと言わざるを得ない。

 被害者家族の高齢化が進んでおり、日本政府は拉致問題解決を急がなければならない。それにはやはり、北朝鮮との対話の道を閉ざしてはならない。

 拉致問題は核・ミサイルと連動しているが、日米韓の関係国には温度差があることも拉致問題を難しくしている。拉致・核・ミサイルの包括的解決を目指す日本に対し、米国などは核・ミサイル問題を重視しているからだ。

 日米韓は連携して、北朝鮮経済の鍵を握る中国に加え、ロシアも引き込み、北朝鮮を交渉のテーブルに着かせる外交努力を尽くしてほしい。

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 今回、日米韓とも独自制裁で足並みをそろえている。

 韓国は同じ10日、開城(ケソン)工業団地の操業を全面的に中断した。韓国企業が北朝鮮の労働者を雇用する形で唯一残る経済協力事業で、南北緊張緩和の象徴だった。

 軍事当局間のホットラインや板門店の赤十字の電話も途絶えた。南北間のすべての連絡チャンネルが断絶しており、両国のちょっとした行き違いから軍事衝突が起きかねない事態である。

 朝鮮半島を「新冷戦」の最前線にするようなことがあってはならない。