名護市辺野古の公有水面埋め立てをめぐって県と国が争っている三つの基地訴訟のうち、「代執行訴訟」と「係争委不服訴訟」の二つの裁判が15日、福岡高裁那覇支部で開かれた。

 「代執行訴訟」は、翁長雄志知事が埋め立て承認を取り消したのは違法だとして、取り消し処分の取り消しを国が求めているもの。この日は翁長知事の本人尋問が行われた。

 裁判に敗れた場合の対応について翁長知事は、国側の質問に答え、「判決に従う」と語った。最高裁まで争って敗れた場合、判決に従うのは行政としてはある意味で「言わずもがな」のことである。この時期にあえてこの発言をしたのはなぜか。

 前回、1月29日の第3回口頭弁論後、多見谷寿郎裁判長は「根本的解決案」と「暫定的解決案」の二つの和解案を提示した。

 県側弁護人によると、暫定案は(1)国は代執行訴訟を取り下げ、沖縄防衛局長も行政不服審査法に基づく審査請求を取り下げ、埋め立て工事を停止する(2)その上で、違法確認訴訟などの手続きを進め、判決が出るまで県と国が解決に向け話し合う(3)判決が出た場合、県と国は結果に従う-という内容だ。

 閉廷後の和解協議で、県は暫定案について「前向きに検討する」との考えを示したという。暫定案を受け入れるかどうかは、辺野古問題の行方を大きく左右する。決定的な分かれ道になる可能性もあるだけに、公開の原則に立って慎重な対応を求めたい。

■    ■

 和解案の根本案は、知事が埋め立て承認取り消し処分を取り消すことを前提に、基地建設後、30年以内の返還を国が米国と交渉する、という内容である。県がのめる要素はまったくない。

 これに対し、暫定案が県側のこれまでの主張に沿った内容であることは確かだ。

 ただ、暫定案には解釈のあいまいな部分が多い。国にとっても受け入れのハードルは高い。和解が成立しない場合、代執行訴訟の最高裁判決を待つことになるが、果たしてどちらが得策か。

 和解案を受け入れるにせよ拒否するにせよ、知事には「辺野古に新基地は造らせない」という公約との整合性を保つことが求められる。

 名護市長選、県知事選、衆院選で示された「辺野古ノー」の民意は重い。民意を失望させるような和解案に合意すれば、知事は政治的存立基盤を失うことになるだろう。

■    ■

 法廷でのこれまでのやりとりを通して浮かび上がってきたのは、「沖縄の基地のありようを議論すべきではない」と主張し、取り消し処分の法律論を前面に押し出してきた国側の姿勢である。

 問われているのは公有水面埋立法に基づく承認取り消しの是非だけではない。

 「辺野古が唯一の選択肢」という政府の主張には沖縄県民の視点が欠けている。「普天間の危険性除去」という主張も、辺野古が完成するまでに数年以上かかることを考えれば説得力に欠ける。新基地建設が目的化してしまっているのだ。