「人付き合いが苦手です」「口下手で、うまく話せません」。コミュニケーションセミナーで講師を務めると、質問タイムに、こんな声が上がることがよくあります。かくいう私も20代後半になるまで極度の人見知りだった(わりと、こじらせていた)ので、長い間、同じ台詞を口にしていました。いま思えば、苦手だと宣言することで、コミュニケーション下手を大目に見てもらいたいという気持ちがあったのかもしれません。

 会社員時代、仕事で一番辛(つら)かったのはお客さまや同僚との会話でした。企画の相談など仕事の話はまだよいのですが、それ以外となると、楽しい話題や気の利いた一言が思い浮かばず対応がそっけなくなってしまうのです。気持ちを素直に伝えたい、ストレスを減らしたい。でもどうすれば…。うなりながら考えて、思いついたのが手書きで気持ちを伝えることでした。

 仕事のやりとり、例えば、借りた資料を返したり回覧を回したりする時に、付箋やメモ用紙に書いた短いメッセージを添えるようにしたのです。内容は「嘉手納さん、資料ありがとうございました」「大城さん、ご確認お願いします」など、ごく簡単なもの。手書きを選んだのは、小さい頃から文房具や手紙が好きで、苦にならなかったからです。小粋な会話をしたり好印象なメールを書いたりするよりは難しくないかな、という消極的な選択でもありました。

 たった一言でしたが、毎日のように書いていると周囲の反応が変わってきました。「メモ、うれしかったよ」などと話しかけてもらえるようになり、自然と会話が弾むようになったのです。以来、手書きのコミュニケーションは私の定番になり、その後も、転職や起業など、さまざまなチャンスをもたらしてくれました。

 話すのがうまい人だけがコミュニケーション上手とは限りません。大切なのは相手に何かを伝えたい、良い関係を築きたいという思いを表現すること。そのための手段は、メールでもSNSでも何でもよいのです。これなら無理なくできるというものを見つけて、ちょっとした工夫をしながら続けてみましょう。習慣になる頃にはきっと、自分らしく気持ちを伝え、相手と良い関係を築く方法が見つかるはずです。(コミュニケーションスタイリスト)