「死ぬときぐらい 好きにさせてよ」。年始に全国紙に掲載された全面広告。ジョン・エヴァレット・ミレイの名作「オフィーリア」に扮した女優樹木希林さんのビジュアルにも目を奪われた

▼死について考えることで、どう生きるかを考えるきっかけになれば、という思いを込めた宝島社の企業広告だ。人生の最期をどう迎えるか。だれもが直面する問いにあらためて考えさせられた

▼超高齢化社会を迎える中、だれにどう支えてもらうか、病気になったときにどこでどう過ごすか。自分らしく生きるには。答えを探すのは簡単ではない

▼ただ、どんな場所であっても、だれからも尊厳を奪われることがあってはならない。川崎市の老人ホームで認知症を含む入所者3人が転落死した事件で、うち1人を殺害した容疑で元職員(23)が逮捕された。動機は何だったのか

▼元職員は入所者の所持品の窃盗などで有罪判決も受けていた。そもそも転落の問題が起こった際の施設側の検証に不作為はなかったか、再検証も求められる

▼介護施設職員による2014年度の高齢者虐待数は300件と過去最多(厚労省)。実効性ある行政のチェック体制や防止策は当然だが、今必要なのは、介護する側も受ける側も同じ命を持ち、自分らしい最期を迎える権利があるという当たり前の教育かもしれない。(赤嶺由紀子)