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社説[ジュゴン保護に疑問符]工事止め実態調査急げ

2018年4月19日 08:04

 辺野古アセスの欠陥問題が再び表面化した。環境影響評価(アセスメント)準備書に盛り込まれたジュゴン保護に関し、米側の専門家が、調査の不適切さを指摘していたことが明らかになった。

 沖縄防衛局は2009年11月、環境アセスの準備書を県に提出。これを受けて米国防総省の専門家チームが10年3月に報告書をまとめ、準備書の問題点を指摘した。

 報告書は、ジュゴン保護について「生息密度など量的数値を把握する調査がない」などの難点を挙げ、「ほとんど価値を持たない」と辛らつに批判している。

 専門家の一人は米海兵隊司令部にメールを送り、「非常に不十分で科学的検証に耐えられない」と突き放す。

 環境アセスが始まる前に、沖縄防衛局は、海底にさまざまな機材を投下し、非公開の事前調査を実施した。

 調査対象をかく乱するような現況調査によって環境が破壊され、ストレスに敏感なジュゴンに影響を与えたとの指摘は、国内の自然保護団体からも上がっていた。

 辺野古・大浦湾に広がる海草藻場は、ジュゴンの貴重な餌場である。埋め立て工事によって海草藻場が減少すればジュゴンの存続にも大きな影響を及ぼすのは明らかだ。

 これまでに確認された3頭のうち、個体Cの情報は途絶えたままである。

 埋め立て工事の影響が疑われる以上、まず工事を中止し、実態調査を進めるべきである。

 アセスに盛り込まれたジュゴン保護策の検証が必要だ。

■    ■

 日米の環境保護団体が国防総省を相手取り、サンフランシスコ連邦地裁にジュゴン訴訟を提起したのは03年のことである。

 国防総省が専門家チームによる調査報告書をまとめたのは、連邦地裁の判決で、ジュゴンへの悪影響を回避、軽減するための手続きを取るよう国防総省に命じたからだ。

 ジュゴン訴訟は、15年に原告敗訴の判決が下ったあと、17年に控訴裁判所が審理を連邦地裁に差し戻す判断を示した。

 ジュゴンへの影響を考慮したかどうかが、米国の司法の場で、あらためて問われることになったのである。

 アセスに盛り込んだジュゴン保護策は、最終的な補正評価書の段階で修正が加えられた。だが、補正評価書の段階でも県は「懸念が払拭(ふっしょく)できない」と不安視していた。

 消息不明の個体Cはどこへいってしまったのか。

■    ■

 世界的に絶滅の危機にさらされているジュゴンは、国の天然記念物でもある。

 貴重なのはジュゴンだけではない。辺野古・大浦湾は、豊かなサンゴ礁に海草藻場、マングローブに干潟と、多様な生物が生息する「生物多様性のホットスポット」と評価されている。

 日本のアセスメントの歴史の中で、辺野古アセスほど「情報公開」「住民参加」「説明責任」が不十分なアセスはほかにないだろう。このようなアセスに基づいて工事が強行され、貴重な海が失われようとしているのである。

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