民主、共産、維新、社民、生活の野党5党は19日、安全保障関連法が集団的自衛権の行使を認めたのは「憲法違反」だとして同法を廃止する法案2本を衆院に共同提出した。

 昨年9月19日に安保法が成立してからちょうど5カ月。まだ施行もされていないというのに、はや廃止法案が提出されること自体、この法律の「異常性」を物語る。法律は与党の数の力で可決・成立したが、「異常性」が解消されたわけではない。

 安保法制については、最高裁の元判事、内閣法制局の元長官、憲法研究者、弁護士ら法曹関係者の大部分が口をそろえて「憲法違反」だと指摘した。

 政府・自民党は集団的自衛権の行使容認の根拠として「1972年政府見解」や「砂川判決」を挙げたが、この二つの文書から「行使容認」を読み取ることはできないというのが多くの専門家の見解だ。

 衆院採決時に安倍晋三首相は「まだ国民の理解が進んでいる状況ではない」ことを認めた。法成立から5カ月たっても、説明責任が尽くされたとはとてもいえない状況なのである。

 安倍政権は「安全保障環境の変化」を強調する。変化への対応は国民の理解が前提である。国民の理解を得るためには、なによりもまず「違憲の疑い」を解消しなければならない。

 廃止法案の提出を機に、中途半端なまま打ち切られた国会論議を再び立ち上げてもらいたい。

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 安保法制は、これまで政府が一貫して認めてこなかった集団的自衛権の行使を認め、他国軍への後方支援を拡大するため自衛隊の海外派遣を随時可能とする道を開いた。

 集団的自衛権の行使容認について内閣法制局は「憲法改正という手段をとらない限りできない」(1983年2月、角田礼次郎長官答弁)との基本姿勢を堅持し続けてきたが、安倍首相は、長官人事の慣例を覆して行使容認派を長官にすえ、閣議決定によって憲法解釈を変更した。

 礒崎陽輔首相補佐官は「法的安定性は関係ない」と言ってのけた。

 憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認した際、内閣法制局の内部でどのような議論があったのか。過去の主張を覆すに至る議論の道筋を行政文書として保存し、情報開示するのが筋であるが、それさえ十分でない。

 「国家安全保障」が強調されるあまり、立憲主義や法の支配が軽視され、違憲の疑いが濃厚な法律によって安全保障の土台そのものが不安定な状態に陥ってしまったのである。

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 民主、維新両党は廃止2法案とは別に18日、対案として領域警備法案など3法案を衆院に提出した。集団的自衛権によらずに自衛隊活動を強化する内容だ。

 これで野党から、廃止2法案と対案3法案が出そろったことになる。国民への説明も不十分なまま、無理に無理を重ねて成立した安保法をもう一度、国会の内外で再論議する絶好の機会である。