屋敷の一角に建てた小屋や自宅の裏座に精神障がい者を閉じ込めた「私宅監置」の歴史を振り返る写真展が、県立博物館・美術館で開かれている。

 狭く、暗い空間に横たわりぼんやりと宙を見詰める男性、別の男性は小屋の奥から差すようなまなざしを向ける、鉄格子の外には中を気遣う母親らしき女性の姿も。

 「動物以下の扱い」と形容されるほど隔離の状況は劣悪で、県内各地の監置の状況を撮影した写真など約50のパネルが映し出すのは、すさまじい人権侵害である。

 会場には現存する監置小屋のレプリカも置かれている。ほとんど身動きが取れないコンクリートの冷たい空間に、昨年89歳で亡くなった男性が約14年間閉じ込められていたという。

 私宅監置を許したのは明治期に制定された精神病者監護法だ。

 1950年に精神衛生法が施行され禁止となるが、米軍統治下にあった沖縄は適用外だった。

 66年に実施された調査で、県内の精神障がいの有病率が本土の約2倍であることが明らかになった。精神科病床や医療職が絶対的に不足する中、琉球政府は復帰する72年まで私宅監置を公認したのである。

 決して遠い昔の話ではない。記憶にとどめる人も多い戦後沖縄の精神医療政策だ。

 苛烈を極めた地上戦で受けた心の傷と、米軍統治がもたらした法の空白が影を落としている。

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 「わが邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸のほかに、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」

 日本の精神医学の礎を築いた呉秀三は、今から100年前、私宅監置の悲惨な状況をこう訴えた。

 精神衛生法施行後、国の補助で病院が次々と建設された本土と違って、差別的な制度が長く続いた沖縄は、さらに不幸が重なったといえる。

 写真展を主催する県精神保健福祉会連合会は、苦難の歴史を後世に伝えようと私宅監置の遺構保存を呼び掛けている。県議会には「私宅監置された精神障がい者の尊厳を回復する県宣言」を求めている。

 すでに多くの方が亡くなり、被害の実態は歴史にうずもれ、被害者は尊厳を奪われたままである。

 公的措置として実施した県には、被害の実態と現在につなげる検証を求めたい。

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 昨年末、大阪府で自宅のプレハブにおよそ15年も閉じ込められた女性が凍死するショッキングな事件があった。今月に入って兵庫県で敷地内のおりに約25年間監禁されていた男性が保護された。いずれも加害者は親で、被害者には精神疾患があったという。

 もちろん許されることではないが、精神障がい者に対する世間の目を恐れて監禁が始まったとしたら、問題は通底する。

 私宅監置を許した社会の誤りを直視することなく、今も残る偏見や差別と向き合うことはできない。