1995年に育休制度が全事業所に義務化されて約20年たったが、導入している県内企業は5割にも達していない。沖縄タイムスのアンケートでは「育休を取りたいと言えない」との声が寄せられるなど、政府が掲げる女性活躍にはほど遠い実態が垣間見える。今回は、ニュース大調査「キニナール」の番外編として育休を取得できず、仕事を辞めざるを得なかった女性を紹介する。(デジタル部・與那覇里子)

4人目が生まれ、曽祖母も面倒を見てくれている(提供)

 糸満市の女性(26)は、4人目を妊娠し、正社員として働いていた不動産会社を辞めた。営業職で、誇りを持って働いていた。売り上げも悪くなかった。「本当は育休を取りたかった」。泣く泣く退社した。

 6歳、5歳、2歳の子どもを抱えながら仕事をしていた。残業は当たり前で帰宅が午後10時を越すこともしばしば。

 10人ほどの会社には既婚者はおらず、男性ばかり。1度、一人の女性が入社してきたが、厳しい就労形態に1カ月もしないうちに退社してしまった。女性社員はまた一人になった。妊娠が分かった時、相談できる上司も部下もいなかった。

 妊娠を知った時はうれしかったのに、ふっくらしたおなかを見ながら、夫の収入だけでやっていけるのか不安に駆られた。

 「育休を取って、仕事を続けたい」と上司に申し出ようと思ったが、理解されるか不安で、社長との共通の知人に相談した。「気難しい人だからまともに取り合ってもらえないのではないか」と返ってきた。子どもが熱を出して休んだだけでもいい顔をされなかったことも気がかりだった。「やっぱり、育休を社長には言い出せなかった」

 現在は会社を辞め、自営業の夫の仕事を手伝っている。「育休を取ると、長期的に休まざるを得ない。そのことが周囲に辞めてもいいと思われることにつながっている。当時は育休を取ることが悪いことだと思っていた」と振り返る。

 出産後、直面した課題は再就職だった。小さな子どもを抱えていると、面接では「子どもが病気になったらどうするのか」と必ず聞かれる。仕事を探し、採用されることは非常に難しく、生活は苦しくなる一方だ。

 自身の体験を通し、「育休を取りたいと言えない女性はたくさんいると思う。このままだと出産そのものを拒む女性も増えてくるのではないか」と懸念する。

 経営者には、労働者の権利を知ってもらうためのセミナーに参加を強く求める。「育休給付金を受給しながら、仕事に復帰できる安心感が労働者には必要。産休、育休をとることで罪悪感を覚える実態は変えていかなければならない」