北朝鮮の金(キム)正(ジョン)恩(ウン)朝鮮労働党委員長が党中央委員会総会で、21日から核実験と大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を中止すると宣言した。核実験中止の透明性を確保するため、北部の核実験場を廃棄することも表明した。

 6月初めまでに行われる見通しの米朝首脳会談を前に、交渉の主導権を握りたい狙いがありそうだ。

 トランプ米大統領は「北朝鮮と世界に非常に良いニュースだ」と歓迎し、韓国大統領府も前向きに受け止めた。安倍晋三首相は「完全に検証可能で不可逆的な廃棄につながるか注視したい」と語った。

 核・ミサイル開発に固執していた北朝鮮の路線転換は踏み込んだ内容で評価できる。だが宣言の内容をみると、楽観できないのも事実だ。

 宣言は、ミサイル発射実験と核実験場を廃棄する「凍結」にとどまっており、保有する核兵器の廃棄には踏み込んでいないからだ。完全な非核化と捉えることはできない。

 金氏は3月の初訪中で習近平国家主席に「(米韓が)段階的で歩調を合わせた措置を取るなら、非核化問題は解決できる」と語った。北朝鮮が措置を取るたびに引き換えに制裁緩和や経済支援などをするという意味である。

 2005年9月の6カ国協議は北朝鮮が核放棄を約束した共同声明を採択。北朝鮮はエネルギー支援などを受けたが、その後、核実験を再開し核・ミサイル開発を進めた。

 国際社会に本気度を示すため北朝鮮は国際原子力機関(IAEA)にすべての核関連施設を申告し査察を受け入れることを宣言すべきだ。

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 核放棄の具体化に向けて厳密に年限を明示したロードマップ(行程表)が必要だ。

 20年夏ごろまでに核完全廃棄を目指す案が日米韓3カ国内に浮上しているという。北朝鮮に時間稼ぎをさせないために段階的な対応に見返りを与えず、短期間で非核化の実現を目指す考えだ。

 北朝鮮が米国から得たい最大の保証は体制維持である。体制の保証が得られなければ、核・ミサイル開発に舞い戻る可能性がある。日米韓など関係国は金正恩体制の存続を前提に、行程表を早急につくり、受け入れさせる交渉を粘り強く行うべきである。

 核・ミサイル・拉致問題の包括的解決を目指すのが日本の立場だ。だが、拉致問題は米国頼みだけでは限界がある。日本が「最大限の圧力をかけ続ける」と叫ぶだけでは大きく動きだしている朝鮮半島を巡る外交の「蚊帳の外」に置かれるばかりである。

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 朝鮮半島情勢の軍事的緊張が高まった昨年、在沖米軍の訓練は激しさを増した。在沖米軍が北朝鮮の動向に直結していることを示した。朝鮮半島の非核化と緊張緩和は、沖縄にとって人ごとではないのである。

 予断は許さないが、北朝鮮の路線転換を捉え、日本は朝鮮半島の非核化に向けて積極的な役割を演じるべきだ。

 日米韓など関係国の橋渡しをし、東アジア全体の平和と安定につながるよう、北朝鮮の路線転換を後押しする外交努力を尽くしてもらいたい。