新聞記者は初対面の女性に年齢を聞く。嫌われても仕方ない。冷たい目を向けられ、「これには深い訳が…」と釈明する

▼テレビと違って話し手の顔を出せないことが多いから。あなたの名前や住む市町村、職業も伝えて、どんな人か読者に想像してほしいから。新聞はそういう小さな事実の集まりだ

▼最近、清原和博容疑者のニュースを見ていて驚いた。現役時代の試合映像で、他の選手や背景全てにモザイクがかかっていた。放映が前提のプロ野球で、一体なぜ

▼モザイクは増える一方だ。テレビ業界が長い森達也氏は著書で「万が一のクレームや抗議が怖いのだ。いや面倒なだけなのだ」と断じる。「表現は人を加害する。開き直れという意味ではなく、その覚悟をしなくてはならない」

▼新聞社でも、例えば車のナンバープレートの写真にモザイクが必要か議論することが増えた。今、ナンバーから住所は調べられないから、モザイクの意味はあまりない。街頭で腕章を着ける、カメラを避けるしぐさを見逃さないなど、撮る時の配慮の方が大切だと思う

▼2005年の個人情報保護法の全面施行後、警察や役所の発表から実名がどんどん消えている。でも、匿名の記事とモザイク写真だらけでは人と時代の息吹は伝えられない。日々、取材相手の了解をもらう努力を続けていく。(阿部岳)