「メキシコ系移民はレイプ犯だ」など数々の暴言を繰り返す米大統領選挙の共和党候補者ドナルド・トランプ氏の人気が衰えない。

 トランプ氏は、争点の一つである移民政策について、前述の過激な発言で米とメキシコの国境に壁を築けと訴えたと思いきや、米国内外で起きた一連のテロをめぐっては「イスラム教徒は入国禁止にせよ」と主張し、極端な反移民や反テロを唱えている。

 このイスラム発言の直後に通信社ブルームバーグが実施した世論調査では、共和党支持者の65%が発言に賛成、反対はわずか22%という結果が出た。

 複数の米メディアが実施した世論調査の数字をたどると、同氏の主な支持層は保守派で白人の低所得者層で、移民や多人種が彼らの経済的苦境を招いたと考え、社会の変化を不安に思う姿が浮かびあがってくる。

 同氏の人気を押し上げたのは、過激な発言だけではない。トランプ氏が所属する共和党は、2014年の中間選挙で主導権を握ったものの、約束した医療保険制度改革(オバマケア)撤回を実現できず、低所得者層向けの経済対策もまとめられないなど指導力の欠如と責任統治能力の低下を露呈し、支持者の信頼を失った。

 オバマ政権を非難するトランプ氏もまた経済格差問題を解決する具体策を示しているわけではないが、不安と恐怖をあおり、差別を助長する発言で支持者の本音を代弁する人気に陰りは見えてこない。

 「いつの時代も将来への恐怖を語る人々がいた。変化にブレーキをかけ、米国を脅かす思考や組織を抑え込めば過去の栄光を取り戻せると彼らは主張する」

 先月12日、オバマ大統領は任期最後の一般教書演説でこう訴えた。

 オバマ氏は変革(チェンジ)を訴え当選したが、あれから約8年が経過したアメリカでは、皮肉にもチェンジを拒み、連帯よりも分断を好む層が広がっている。全米各地で選挙が盛り上がるかたわら、病めるアメリカの行方を照らす道標はまだまだみえてこない。(平安名純代・米国特約記者)