「チムグリサン」。戦後沖縄の「福祉の母」と呼ばれた故・島マスさんが信条とした言葉だ。米軍統治下、孤児や非行少年、戦災母子世帯の状況に「心が痛む」という意味で使い、救済に力を注いだ

 ▼島さんの福祉哲学を受け継ぐ人材育成を目指し沖縄市社会福祉協議会が設置した島マス記念塾。福祉だけでなく歴史や文化、経済など幅広い講義が特徴で、全国的にも注目された。しかし、運営費用が確保できず来年度から廃止になるという

 ▼市社協が紹介する島さんの言葉を見直した。子を守る法律もない時代、「私は『心の痛み』にたえかねてこの子たちを自分の家へつれてきて面倒を見ることにしました」

 ▼貧しい家に生まれ、苦学の末教師に。やんばるの疎開先で食糧難の中、周囲に助けられた。「自分も腹をすかしていながら、少ない食事のなかから分けてやらなければ『自分の心が痛む』という、沖縄の民衆の心のありように感動する」とも

 ▼全国的に子どもの貧困が深刻化している。行政が対策を打ち出す中、個人や企業、各団体の支援の動きも出ている。今だからこそ「チムグリサン」の精神が必要ではないか

 ▼他人の苦悩や痛みに寄り添う島さんの理念の継承は、地域の財産・誇りになる。十数年前、遅刻や欠席もあったが卒塾させてもらった身。いま一度、言葉を胸に刻みたい。(赤嶺由紀子)