「人間にとっていちばん悪い発見は、他の星、たとえば火星に人物がいないことです」。日本文学研究者のドナルド・キーンさんがある対談で語っていた

▼宇宙人がいたら、人間同士で戦うことなく、宗教や民族の違いを超え、手を取り合っていただろうと。やむことのない戦争の歴史を顧みれば、逆説的な例えにうなずけなくもない

▼登場から50年になる「ウルトラマン」の生みの親、故金城哲夫さんも、人の分け隔てを越えた“一体感”を作品のコンセプトにしたであろう。金城さんを描いた劇団民藝の舞台「光の国から僕らのために」を見て思った

▼大ヒーローを世に送った栄光だけではない。ルーツの「沖縄」、育った「本土」のはざまで立ち位置に葛藤し、失意を深め身を滅ぼしていった姿も描いた

▼ウルトラマン第33話「禁じられた言葉」では、怪人が「おまえは宇宙人なのか、人間なのか」と問いかける。宇宙人と人間とをつなぐ存在のウルトラマンは「両方さ」と答える。「沖縄と本土の懸け橋になる」。金城さんの思いを象徴した場面ともいわれる

▼沖縄と本土の溝、政府との対立が深まる現状を舞台に投影し考えてもみた。彼我の一体感をどう結び合えるかと。「来てくれないかな、ウルトラマンよ」。泉下の金城さんもそう思っていよう。没後40年の命日である。(宮城栄作)