辺野古代執行訴訟で稲嶺進名護市長が、29日の第5回口頭弁論の証人尋問に臨む。新基地をめぐる国と県の三つの訴訟で、名護市長が証言台に立つのは初めてだ。尋問に先立ち、福岡高裁那覇支部に提出した陳述書の要旨は次の通り。   

稲嶺進名護市長

 名護市は普天間飛行場代替施設建設問題に翻弄(ほんろう)され、約20年にわたり市民が二分され、もはや“異常”とも言える状況が続いている。私は5年前に「辺野古の海にも陸にも新たな基地は造らせない」を公約に掲げ、市長に当選した。

 名護市の米軍専用施設面積は計2279ヘクタールで、市面積の約11%を占める。廃弾処理や実弾射撃の訓練による騒音、振動、山火事、オスプレイやヘリコプターの低空、夜間飛行による騒音など、住民生活に大きな不安と被害を与え、住民の安心と安全を保障する地方自治体の最重要責務の遂行を著しく害している。

 公有水面埋め立て承認申請に関する意見では、名護市の住民生活、自然環境への影響はあまりにも甚大で、豊かな自然環境の保全も不可能であるという結論にいたった。

 第三者委員会が仲井真弘多前知事の承認に重大な瑕疵(かし)があると判断したことは至極当然の結果で、翁長雄志知事の承認取り消しを支持する。

 そもそも沖縄防衛局が地元名護市や沖縄県の理解を得ないままに辺野古で普天間代替施設建設事業を強行的に進めようとしていること自体重大な問題だ。県内の選挙結果から市民や県民が反対しているのは明白である。

 米兵絡みの事件・事故の危険にさらされ、人権をも脅かされる不安な生活を70年の長きにわたり強いられてきた。いくら国防のためとは言え、一地域に犠牲と負担を押し付け、地域住民の声を無視し、蹂躙(じゅうりん)し続けることが民主主義国家のあるべき形だろうか。

 代執行訴訟は沖縄の未来を自ら勝ち取るアイデンティティーの闘いであり、市や県の将来を担う子や孫たちに今を生きる私たちの信念と気概を示す闘いである。地元自治体の市長として政府の代執行に断固反対の意思を表明する。