本島北部に広がる生命力あふれる森が、近く国立公園に指定される。「奄美・琉球」の世界自然遺産登録に向けても弾みとなる動きだ。私たちの身近な自然が、日本を代表し、世界に誇る「宝」として認められたことを喜びたい。 環境省が国立公園指定の方針を示しているのは、国頭、大宜味、東村にまたがる「やんばる地域」の陸域約1万3600ヘクタールと海域約3700ヘクタール。6月の中央環境審議会を経た上で、国内33カ所目の国立公園となる見通しだ。県内では西表石垣国立公園、慶良間諸島国立公園に次ぐものである。

 やんばる地域の魅力は何といっても、国内最大級の亜熱帯照葉樹林、そして世界でここにしか生息しないヤンバルクイナやノグチゲラなどの動植物、波の浸食によってできた石灰岩の崖やカルスト地形、マングローブ林など豊かな自然である。

 近年、エコツーリズムが観光客にも人気だが、県民も自然に親しみ、その力に癒やされるなど、さまざまな恩恵を受けてきた。

 国立公園では無秩序な開発や利用の増大から自然景観を守るため、特別保護地区、特別地域、普通地域などの保護区分を設けている。

 やんばるでは、特に法規制の厳しい特別保護地区や第1種特別地域が住民生活と近接するのが特徴だ。

 海と山に囲まれ、自然の恵みを受けて暮らしてきただけに、持続的な利用と保護のバランスをどう図っていくのか、課題は少なくない。

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 国立公園指定の動きに対し地元では、人が増え、車が増え、ごみが増えるのではないかと影響を心配する声が出ている。

 公園計画書案には、人数の制限やガイドの同行、マナーの徹底などルールの検討が触れられているが、具体策はこれからだ。

 例えば北海道の知床国立公園では、野生生物に食べ物を与えない、動植物をとらない・持ち込まない、ごみは持ち帰る、ペットを外に連れて歩かない、車のスピードは控えめに-など利用にあたっての約束を設けている。

 県内ではヤンバルクイナの交通事故被害や、野猫による捕食が相次ぎ、対策の強化が叫ばれている。

 やんばるには住民が守り伝える行事や風習も多く、地域の生活や文化への配慮も必要となる。

 大切な自然を未来に引き継いでいくためにも「やんばるルール」の確立を求めたい。

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 今回、指定区域に米軍北部訓練場は含まれていない。環境省は「訓練場が返還されれば区域拡大も検討する」としているが、隣り合う基地に何の規制もかけずに生態系を守ることができるのだろうか。

 基地をめぐってはオスプレイ離着陸時の排ガスや下降気流、低周波音が動植物に与える影響が指摘されている。

 基地のない地域では自然を守ることが最優先されるのに、沖縄では基地の上に線を引くことができない。

 世界自然遺産登録に向けては、このいびつな公園の形にも向き合う必要がある。