頭では理解できるが、気持ちが納得しないという事態に、人は唐突に襲われることがある。自分は世の中のさまざまな差別に対して理解があると踏ん反り返っていたある日、娘が、男の子になりたいと真剣なまなざしで訴えてきたらなんとしよう。

「アバウト・レイ 16歳の決断」の一場面

 ルイは、性同一性障害に悩む、女の性で生まれてきた男の子。シングルマザーの母親と暮らしながら、少しでも早く本物の男の子になりたくて、悶々(もんもん)とした感情を持て余していた。母親は「私の大切な息子」と抱き寄せながらも、どこかでこれがわが子の一時の気の迷いだったら、と決定的決断が出来ないでいる。

 子供の性が何であれ、わが子だと抱きしめる母親の愛に他人が涙することは容易だが、母も子もそんな安っぽい涙など願い下げだろう。ルイの物語に寄り添うとしよう。(スターシアターズ・榮慶子)

 ◇シネマパレットで上映中