北朝鮮の「非核化」に向けた道筋は結局、示されなかった。日米双方から懸念や失望の声が上がるかもしれない。 ただ、だからと言ってこの会談が失敗だった、と決めつけることはできない。

 韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョウン)朝鮮労働党委員長は27日、軍事境界線のある板門店(パンムンジョム)で会談した。

 北朝鮮の首脳が軍事境界線をまたいで韓国に入るのは初めてである。

 「対決の歴史に終止符を打つためにきた」。表舞台で見せた素顔、立ち居振る舞い、ソフトな受け答えによって、金委員長は、北朝鮮の変化を世界に印象づけた。

 ホスト役の文大統領は、至る所で南北融和を演出し、昨年までの軍事衝突の「危機」を平和への「機会」に変えることに成功した。

 会談の主な議題は「非核化」と、朝鮮半島の「平和構築」だった。

 「非核化」について共同宣言(板門店宣言)は「南北は完全な非核化を通して、核ののない朝鮮半島を実現するという共同目標を確認した」ことを明らかにしている。

 「非核化」は、その方法から範囲、手順、査察に至るまで、極めて複雑なプロセスをたどる。その道筋が共同宣言には示されていない。

 「共同目標」という言葉は、達成時期が明示されていないため、それだけでは実効性をもたない。

 6月初旬までに開かれる予定の米朝首脳会談に向け、北朝鮮が「非核化」カードを温存したとも考えられる。不透明感は残ったままだ。

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 「平和構築」について両首脳は、年内に朝鮮戦争の終戦宣言をし、休戦協定を平和協定に転換するため、米国や中国を交えた会談を推進することで合意した。 

 朝鮮戦争の犠牲者は民間人を含め400万人とも500万人ともいわれる。1953年に休戦協定が結ばれた後も、朝鮮半島は、冷戦の下で、半世紀以上にわたって「戦争にはならず、平和でもない状態」が続いた。

 休戦協定を平和協定に転換するということは、朝鮮半島に残る冷戦構造に終止符を打つ、ということである。

 北朝鮮の「非核化」と平和協定への転換は、密接に関係している。米朝首脳会談が成功すれば、両者が同時並行して進む可能性があり、その場合、日本と北朝鮮の国交正常化も浮上するだろう。

 関係国が共同歩調を取ることによって、東アジアの平和秩序形成の第一歩となることを期待したい。

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 安倍晋三首相が文大統領に要請した拉致問題は、首脳会談の公式の場では取り上げられなかったという。

 文氏と金氏は、公式会談の合い間に屋外で、2人きりで話し込んでいる。そのときに取り上げた可能性もあるが、まだはっきりしない。

 北朝鮮に対して、安倍政権は、圧力一辺倒の強硬路線を続けてきた。米国が対話方針に転じたことで、日本の孤立感が深まった。

 米国オンリーの外交は危うい。韓国や中国との関係改善が急務である。