前次官の謝罪もなければ、大臣の監督責任も問われない、極めて不十分な対応である。

 財務省は、女性記者へのセクハラを報じられ事務次官を辞任した福田淳一氏について、セクハラ行為があったと認定し、退職金を減額する処分に踏み切った。

 立場を利用した人権侵害という批判に抗しきれず、追い込まれた末の決定である。

 福田氏はセクハラを否定しているが、テレビ朝日の女性社員と一対一で飲食したことは認めており、テレ朝側の主張を覆すだけの反証が示されていない。処分として5319万円の退職金から141万円が差し引かれるという。

 セクハラ認定されたとはいえ、両者の主張は食い違ったままである。再発防止のためにも詳細な調査が求められているのに、政権への影響を考え、早々に幕引きを図ったとの印象は否めない。

 公表された音声データを聞けば、セクハラ発言があったことは明らかだ。本人の謝罪もないまま、辞職後にセクハラ認定するという財務省のやり方にも疑問が残る。

 この問題を巡っては「はめられ訴えられているんじゃないか」など麻生太郎財務相から耳を疑うような発言も飛び出した。

 永田町や霞が関といった男性中心社会で権力を持つ人たちの人権意識の欠如が、セクハラに寛容な土壌をつくっているのではないか。

 もちろん猛省してもらわなければならないが、再発防止策を、この組織に任せることはできない。

■    ■

 福田氏のセクハラ認定を受け女性社員は「ハラスメント被害が繰り返されたり、被害を訴えることに高い壁がある社会ではあってほしくない」とコメントを出した。

 労働政策研究・研修機構の調査で、セクハラを受けた女性の6割以上が泣き寝入りしたとの報告がある。女性の社会進出の遅れから、告発した側が嫌がらせを受けたり、配置転換されるなど不利益を被ることが多いからだ。

 女性社員が次官との会話を録音し、週刊誌に提供したことのモラルを問う声がある。しかしその目的は自らの人権を守るためで批判は的外れだ。

 セクハラ対策で重要なのは告発した社員を会社が守るということである。今回、女性社員はセクハラ被害の報道を上司に相談しているが、適切な対応が取られなかったことは残念である。

■    ■

 メディアに身を置くものとして、力関係に差がある取材相手からのセクハラは人ごととは思えない。情報を取ることを優先し理不尽な振る舞いに目をつぶり、やり過ごしてきたという女性の何と多いことか。振り返ればその沈黙が、セクハラ被害を軽視する風潮を生み出したのかもしれない。

 新聞労連は22日、女性集会を開き「セクハラに我慢するのはもうやめよう」「こんな不条理や屈辱は終わりにしよう」との声明を発表した。仲間の勇気ある行動を、セクハラがはびこる社会を変える分岐点にしなければならない。