日朝関係も大きく動きだしそうな気配だ。

 27日の南北首脳会談で、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が「いつでも日本と対話を行う用意がある」と言及していることが分かった。韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が安倍晋三首相との電話会談で伝えた。韓国大統領府が明らかにした。

 外交チャンネルがないまま長年、交渉の糸口さえ見いだせない手詰まり状態が続いていただけに、日朝関係の大転換となる可能性がある。

 安倍首相は南北首脳会談前に、文氏に日本人拉致問題や日朝関係を提起するよう要請していた。6月初めまでに開かれる米朝首脳会談でトランプ米大統領も拉致問題を取り上げると明言している。

 日朝関係に横たわるのは核・ミサイル・拉致問題である。拉致問題は人道に反する国家的な犯罪だ。拉致被害者家族が高齢になっていることを考えれば、この機会を逃してはならない。

 北朝鮮は昨年まで日本海で弾道ミサイル実験を頻繁に行い、日本を射程に収める中距離弾道ミサイルを大量に配備している。これも焦点だ。

 安倍首相は「対話のための対話は意味がない」との立場を崩さず、米韓が対話路線に転換する中、日本は「蚊帳の外」に置かれていた。

 日朝首脳会談が実現するかは、米朝首脳会談の成否にかかる。それだけに失敗の許されない歴史的な会談となる。

 短期間に「完全非核化」を求める米国と経済的な見返りを得ながら段階的に進めたい北朝鮮との間には溝があり、不透明感も漂う。

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 日朝間には2002年、小泉純一郎首相が電撃的に訪朝し、金正日(キムジョンイル)総書記と署名した「日朝平壌宣言」がある。

 北朝鮮工作員らが1970~80年代に日本人を拉致。金総書記が拉致を認めて謝罪し、被害者5人の帰国が実現した。北朝鮮は安否不明の12人に関し「8人死亡、4人未入国」と主張している。拉致の可能性を否定できない「特定失踪者」も多数存在する。

 宣言では「日本国民の生命と安全にかかわる懸案事項」との表現で拉致問題が取り上げられ、「適切な措置をとる」ことを確認している。

 核・ミサイル・拉致問題を包括的に解決して国交を正常化し、その後に戦後補償の形でさまざまな経済支援が盛り込まれている。

 日朝が戻るべき宣言はすでに存在するのだ。日米韓3カ国は緊密に連携を取りながら取り組んでもらいたい。

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 拉致問題は米韓と協力するのはもちろんだが、最終的には日朝2国間で主体的に解決すべき問題だろう。日朝首脳会談実現に向けて周到な交渉準備を整えてもらいたい。

 南北、米朝の間で今年に入って急速に対話ムードが高まっている。今度は日朝である。しかし対話路線は緒に就いたばかりだ。

 朝鮮半島の非核化と平和構築は日本、とりわけ在日米軍基地の7割を抱えている沖縄に直結する問題だ。

 関係国は外交努力を尽くし東アジアで醸成されている平和と安定の機運を後戻りさせることがあってはならない。