無期雇用に転換できるルール開始直前の「雇い止め」は制度の趣旨をゆがめる。

 沖縄女子短期大学に勤めていた非常勤講師の男性が、3月末に契約を止められ、事実上の雇い止めにあっていたことが分かった。

 改正労働契約法により、この4月から非正規労働者が同じ職場で5年を超えて働くと、正社員と同じように定年まで勤めることができる「無期転換ルール」が始まっている。

 2013年4月から半年ごとに契約を更新しながら働いてきた男性は、契約が更新されれば無期転換の対象となるはずだった。

 大学は「カリキュラムの改定で前期に授業を入れられなかった。雇い止めではない」と説明する。しかしこれまで何度も有期雇用契約を繰り返してきたことを考えると、合理的理由を欠いているようにみえる。

 大学は新年度から、非常勤講師の任期を無期転換の権利が得られない「5年以内」とする就業規則も適用している。

 5年に満たないうちにリセットする動きは他企業でもあり、法の「抜け道」を利用した雇い止めとの強い批判が出ている。

 さらに男性に対し、大学側が10月開始の後期から再契約の意向を示しているという。

 新ルールでは、次の契約まで6カ月以上の空白を設けると通算期間がリセットされ、無期転換が適用されないことになっている。

 無期転換逃れの運用なら、厳に慎むべきだ。

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 雇い止めが特に目立っているのが大学や研究機関である。補助金の減額、18歳人口の減少などから、できるだけコストを抑えたいとの思惑が見え隠れする。

 東北大では3月末に雇い止めされた複数の非正規職員が、雇用継続を求めて労働審判を申し立てている。

 高知県立大でも雇い止めされた有期契約職員が、雇用関係の確認を求めて提訴している。

 そもそも無期転換ルールは、リーマン・ショック後、雇い止めが社会問題化したのをきっかけに、非正規の雇用を安定させる目的で作られた。

 教育の場で、立場の弱い人を切り捨てるようなことがあっていいはずがない。質の高い雇用が質の高い教育につながることも理解してもらいたい。

 文部科学省は無期雇用への転換が適切に進められているのか、実態把握に努めるべきだ。

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 先月末、衆院で審議入りした働き方改革関連法案には、非正規労働者の処遇改善を目指す「同一労働同一賃金」が盛り込まれている。

 新ルールは正社員への登用までは踏み込んでいないが、仕事が同じなら賃金も同じという考え方に従えば、積極的な待遇改善が求められる。

 1990年に働く人全体の2割だった非正規労働者は、今や4割に上る。

 「抜け道」を使った雇い止めの横行に対しては、さらなる法改正が必要だ。