身近で安価なバナナの見方が少し変わったのは、学生時代に読んだ「バナナと日本人」(岩波新書)がきっかけだった。過酷な労働や大企業による農業者の搾取といった構図、仕組みがあることを知った

▼古い本だが、バナナを買うたびに、消費者として何を考えるべきかと思いを巡らせるようになった。とはいえ、消費行動が激変したわけでない。やはり安くておいしい果物として手に取る

▼そんな身近な食品について考えさせられる興味深い本がある。便利でどんな料理にも重宝するトマト缶を巡るルポ「トマト缶の黒い真実」(太田出版、4月30日付くらし面)だ

▼緑・白・赤のトリコロール色といえばイタリア。そんなデザインとは裏腹に、中身は過酷な労働によって支えられている中国産が入っていることが想像できるだろうか

▼再加工された缶詰の原産国が消費者に見えなくなっていることや別の国では、劣化したトマトに添加物を入れて再加工される実態、衛生基準に満たない濃縮トマトを安く売りさばく…。3年近い取材でトマト缶の裏側を描いた著書は、消費者に多くを問い掛ける

▼買うか買わないかという議論だけではない。なじみ深い食材だけに、表に見えにくい部分に目を向ける大事さを痛感する。物や情報があふれる中、消費者としての問題意識は忘れたくない。(赤嶺由紀子)