腹話術師にしてマジシャン。半世紀近く多彩な芸で県民に笑顔をもたらし、ボランティア活動にも熱心に取り組んできた春風トシロー(本名・伊波利夫)さん(76)=南城市=が1日、泊高校定時制夜間部を卒業した。「物事を知るほど芸は深まる。もっと学び、もっと人を喜ばせたい」。芸人として、一人の人間として、さらなる高みを目指す。

卒業証書を手に笑顔の伊波利夫さん=1日、那覇市・泊高校

 芸を始めたのは20代半ば。人を喜ばせるのが好きな性格が高じて手品を身に付け、障がい者施設で披露すると観客は「面白い!」と大興奮。腹話術も習得し、あちこちの施設や催しで引っ張りだこになった。

 沖縄戦時は北部山中に身を潜めた。末の妹は栄養失調で亡くなり、父が眠る場所は今も分からない。戦後は苦しい家計を支えるため中学卒業後は軍で皿洗いしやがて芸能で身を立てた。

 古希を過ぎ、大病も患ったが「やり残したことがある」と高校入学。毎日片道1時間半をバスで通い、通常4年のカリキュラムを“飛び級”して3年で修了した。「『卒業式が先か、葬式が先か』と言っていたのが懐かしい。卒業証書をもらって先生方の顔を見たら、目が潤んだなあ」。

 卒業後は放送大学に入学予定。「生きることは学ぶこと。肩書などどうでもいいが、勉強して人のためになれるんだったら、これ以上の幸せはないよ」。キャンディーの王冠をかぶったひょうきんな格好で、級友や教師らと旅立ちを喜んだ。