憲法改正を発議するに当たり、求められる最低限の条件は政権に対する信頼だろう。

 自民党が掲げる憲法改正4項目は(1)戦力不保持を定めた9条2項を維持しつつ自衛隊を明記(2)大災害時に内閣に権限を集中させる緊急事態条項の新設(3)参院選の合区解消(4)教育充実-である。

 共同通信社の憲法に関する郵送世論調査では、4項目全てで「反対」や「不要」など否定的意見が上回った。特に安倍晋三首相の下での改憲には反対が61%と、賛成の38%を大きく上回った。安倍首相の政権運営に対する厳しい見方の反映だろう。

 森友学園への国有地売却に関する決裁文書の改ざん、加計学園の獣医学部新設を巡る問題では当時の首相秘書官の「首相案件」との発言が愛媛県の文書で確認されている。麻生太郎副総理兼財務相の対応も政権の信頼を低下させている要因だ。

 自衛隊は日報を隠蔽(いんぺい)し、幹部自衛官が国民の代表である国会議員に暴言を吐いた。いずれも政治が軍事に優先するシビリアンコントロール(文民統制)を脅かしかねない。

 共同通信社の4月の世論調査では内閣支持率が低下。支持しない一番の理由は「首相が信頼できない」である。

 国会は与野党が対立し、憲法論議が進まない。自民党内も一枚岩ではない。党総裁選への出馬が取りざたされる石破茂・元幹事長、岸田文雄政調会長の憲法観とも異なる。

 2020年の改正憲法の施行についても、反対が62%に上り、賛成は36%にとどまった。改憲の緊急性や必要性を認めていないのだ。

 信頼なくして改憲なし。

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 自民党の9条改憲案は戦力不保持と交戦権の否認を定めた9条2項を維持しつつ、別立ての「9条2」を新設するものだ。「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として自衛隊を保持する」案が有力だ。

 安倍首相は「自衛隊を憲法に明記するだけで、現状と変わらない」と強調するが、ほんとうにそうだろうか。

 政府は戦後一貫して集団的自衛権を認めない立場だった。しかし一方的な憲法解釈によって限定的に集団的自衛権行使を認める安全保障関連法を成立させた。解釈変更は日本の武力行使の範囲とあり方を極めて不明確にした。

 「後法は前法を破る」との法理の原則に立てば、9条2項は空文化する。「必要な自衛の措置をとる」ことを書き込めば、時の内閣の解釈によって集団的自衛権の全面的な行使容認につながるだろう。

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 昨年12月、普天間第二小学校運動場に米軍普天間飛行場所属のCH53E大型輸送ヘリから約8キロの窓が落下した。

 運動場使用を再開した2月13日から3学期修了までに児童らが登校した28日間だけで避難が計216回に上った。とても授業どころではない。

 憲法が保障する生存権や教育を受ける権利が「安保・地位協定」によって恒常的に脅かされているのである。

 沖縄において緊急に求められているのは、憲法を実現すること、改憲よりも地位協定の改定である。