米大統領選の民主、共和両党の候補者指名争いで予備選や党員集会が1日、11州で開かれた。指名争いの行方を占う「スーパーチューズデー」(決戦の火曜日)である。

 与党民主党はクリントン前国務長官(68)が7州で勝利を収め、指名獲得へ前進した。野党共和党は実業家トランプ氏(69)が同じく7州で勝ち、指名争いで優位に立った。

 2月に行われた4州の予備選・党員集会では、クリントン、トランプ両氏とも3州で勝利している。このまま推移すれば、「正統派候補」と「異端候補」の対決になる可能性が高まっている。

 女性初の大統領を目指し、オバマ政権を継承するクリントン氏は8年前にも出馬しており、黒人や女性票を取り込んだ。これに対し、トランプ氏の支持者は当初、低所得層の白人男性とされてきたが、広がりをみせている。

 スーパーチューズデーの特徴は、トランプ氏の圧勝とサンダース氏の健闘である。

 トランプ氏がここまで勢いづくことを、選挙前に想像した人は少なかったに違いない。「偉大な米国を取り戻す」とスローガンと暴言を繰り返し、支持を広げる背景には何があるのだろうか。

 トランプ氏の歯に衣(きぬ)着せぬ発言が受け入れられているのはテロや不法移民に対する国民の不安と嫌悪感の本音をつかみ取っているからだろう。

 サンダース上院議員も異端である。4州で勝利し、選挙戦を続行する考えだ。「民主社会主義者」を名乗り、格差是正を訴える。支持者の多くは格差に苦しむ若者である。

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 トランプ氏が国家の最高指導者としての資質を持っているかどうかは疑問だ。しかも超大国の指導者である。

 不法移民を防ぐためメキシコ国境に高い壁を建設。メキシコ人を犯罪者呼ばわりし、建設費をメキシコに支払わせると主張する。イスラム教徒の入国を禁止するとも言っている。トランプ氏の暴言と排外主義は英国をはじめ世界から懸念が強まっている。

 米有力紙ワシントン・ポストは「今こそ『トランプ氏を支持できない』と声を上げる時だ」と共和党の指導者に向け異例の社説を掲載。だが共和党は対処できない。ローマ法王も「壁を築くことだけを考え、橋を架けようと考えない人物はキリスト教徒ではない」と批判した。

 移民排斥など排外主義は欧州でも広がる。日本のヘイトスピーチも根っこは同じだ。自由を旗印にする米国が先頭に立ち世界が排外主義に陥ることを考えるとぞっとする。

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 トランプ氏とサンダース氏は両極端のようでいて、共通点がある。分厚い中間層が崩れ、労働者はグローバル化による格差が拡大していると感じている。有権者の「既存政治」に対する怒りや不満をすくい上げているのである。

 大統領選は序盤戦のヤマ場を越え、7月に全国党大会が開かれ、統一候補を選出。11月に本選挙が行われる。

 米国はなお政治、経済、軍事力、科学技術力で世界トップの実力を持つ超大国である。その指導者が世界に与える影響力は大きい。