私らしく、はたらく(17)吉戸三貴

 仕事で泣くのは、最初で最後にしよう。そう決意したのは、沖縄の老舗ホテルの女性用トイレです。さかのぼること十数年前、私は泣きながらクライアントと上司に電話をかけていました。涙の理由は、県外からの大事なお客さまのアテンドに失敗したこと。イベント担当者として会議場からホテルまでハイヤーでお送りしなければいけないのに、スケジュールの確認が不十分で見失ってしまったのです。

 どんなに冷静になろうとしても声の震えがとまらず、クライアントには「とりあえず、落ち着いて」と言われ(おっしゃる通りです)、上司からは「もう帰って」と言われて(ほんと、そうですよね)しまいました。自分への苛(いら)立ちや反省などいろいろな感情が入り混じり、涙としゃっくりがとまりませんでした。

 その後、お客さまはご自身でホテルに到着されたことがわかり、最敬礼をしてお許しいただきましたが、腫れた目を氷で冷やしながら、二度とこんなミスはしない、仕事中は絶対に泣かないと決めました。感情的になっても何の解決にもならないばかりか、自分の評価を大きく下げてしまうことを学んだからです。以来、トラブルが起きたら、三つのステップで冷静に対処するようになりました。

 ステップ(1)は、気持ちを整える。ミスを重ねないように、まずは落ち着きを取り戻します。深呼吸3回など、自分なりのルーティンがあると安心でしょう。

 ステップ(2)は、事実を抽出する。先ほどの例なら「お客さまを見失い、どこにいるのかわからない」が事実です。後悔や反省など湧き上がる感情はいったん脇に置いて問題に集中します。

 ステップ(3)は、迅速に行動する。上司の指示を仰ぐ、可能性がある場所に連絡を入れるなど、最短ルートで解決するよう努めます。ひとりで抱え込むと事態が悪化しやすいので、一刻も早く報告することが大切です。

 状況が落ち着いてから、原因を明らかにして、再発防止策まで考えられれば完璧です。動揺している時に冷静な対応をするのは簡単ではありませんが、「涙スイッチOFF、解決モードON」を意識して、三つのステップで行動すると実践しやすくなると思います。トラブルが起きた時こそ冷静に。20代の頃、涙でクライアントの信頼を失った私が、今も心に留めている教訓です。(コミュニケーションスタイリスト)