史上初の米朝首脳会談を前に、関係国の動きがあわただしくなってきた。

 水面下で米朝の真剣な話し合いが続いている証しであるが、非核化の進め方を巡って関係国の間に隔たりがあることも浮き彫りになっている。

 安倍晋三首相と中国の李克強首相、韓国の文在寅大統領は9日、東京で日中韓首脳会談を開いた。3カ国の首脳会談は2015年11月以来、2年半ぶりである。

 3カ国の首脳は、4月の南北首脳会談の成功と、「完全な非核化」を盛り込んだ板門店宣言を高く評価し、北朝鮮の非核化に向け連携していくことで一致した。

 首脳会談の最大の焦点は、圧力維持を強調する日本と、対話を重視する中韓の隔たりをどこまで埋めることができるか、という点だった。

 日本はこれまで、非核化について、米国と足並みをそろえ、「検証可能かつ後戻りできない方法で完全に放棄」することを求めてきた。

 北朝鮮が非核化への具体的な行動を取るまで、国連安全保障理事会の制裁決議を厳格に履行し、最大限の圧力をかけ続ける。それが日本の姿勢だ。

 だが、中韓両国は「段階的な非核化」を主張している北朝鮮に理解を示している。中韓と日本の隔たりは、首脳会談でも埋められなかった。

 圧力一辺倒の強硬路線を続ければ、日本は蚊帳の外に置かれ孤立するおそれがある。軌道修正を図って3カ国の協調体制を維持し、日朝会談につなげるべきだ。

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 北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は7日、急きょ訪中し、習近平国家主席と遼寧省の大連で会談した。

 これを受けて習主席は8日、トランプ米大統領と電話会談し、北朝鮮の要求に応じるよう申し入れたという。

 米国は核兵器だけでなく、弾道ミサイルや生物・化学兵器など大量破壊兵器全般を廃棄対象とするなど、ハードルを徐々に上げているといわれる。

 金正恩委員長の突然の訪中は、こうした状況に対する危機感の表れなのだろう。

 北朝鮮の非核化をどのようなプロセスで進めていくか。目に見える成果を急ぐ米国と段階的措置を求める北朝鮮との溝は埋まっていない。

 文氏と李氏は、この日開かれた二者会談で、完全な非核化が実行される場合、北朝鮮の体制保証や経済開発支援などに米国を含む国際社会が積極的に参加すべきだとの見解で一致した。

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 日中韓首脳会談が開かれた9日、米国のポンペオ国務長官が再び北朝鮮を訪問した。交渉の結果、北朝鮮に拘束されている米国人3人の解放が決まった。

 対立点を抱えながらも、米朝首脳会談に向けた環境整備は着実に進んでいる。

 朝鮮半島に歴史的な地殻変動が起きつつあるのだ。

 南北首脳会談を成功させ、米朝会談の橋渡し役を務めた文氏の言葉は重い。

 「(米朝首脳会談は)二度とないかもしれない機会で、必ず成功させなければならない」