「世界遺産なんてとんでもない」。世界自然遺産を目指す動きが始まった十数年前、やんばるの地元では開発や経済活動が制限されるとして反対する意見も多かった

▼環境省の歴代担当者が地元や関係者との折衝に苦労し、長い準備を進めてきた経緯は理解する。それでも、希少な固有種の生息地、生物多様性、独自の生態系を守り抜く覚悟を内外に示すには、推薦地の範囲はあまりに小さいと言わざるを得ない

▼ユネスコの諮問機関IUCNは沖縄・奄美の世界遺産登録を「延期」と判断した。生態系の分断を問題視し「生態学的な持続可能性に重大な懸念がある」と指摘する。主に沖縄島北部に向けたものと推測できる

▼文化遺産も含め、日本の推薦地に厳しい評価が下った例は過去にもある。だが今回の勧告が異例なのは、世界遺産としての価値は十分と認めつつ、示された面積や手法では足りないとし、より手厚い保護策を求めた点にある

▼推薦地は山々の脊梁(せきりょう)部を中心に細長く、緩衝地帯も周囲にわずかしかない。陸域と海域を丸ごと登録した知床などと比べ、本気度を疑われても仕方がない

▼遺産登録はゴールでなくスタート。問われるのは保護策の中身であり、議論を深めることはユネスコのお墨付きをもらうより重要だ。意義ある「足踏み」だったと振り返る日が来ることを願う。(田嶋正雄)