「愛楽園の10万坪の土地には隔離政策で強制的に閉じ込められた人たちの苦しみの涙が埋まっている。私は『らい予防法』で隔離された私たちがどのように生きなければならなかったかを知って欲しいと思ってガイドをしている。そして隔離された私たちの家族がどのような状況で、どのような思いで暮らしてきたのか、『らい予防法』が家族の暮らしを壊し、家族の命すら奪ったことを分かって欲しいと願っている」。

「隔離」を生きて(沖縄タイムス社・1296円)

 この言葉は、本書の著者、平良仁雄さんの感慨である。本書の紹介はこの言葉に収斂(しゅうれん)されるだろう。著者といっても、平良仁雄さんの証言をまとめた本だ。まとめた人は2013年の来沖以来、愛楽園自治会と関わって活動を続け、現在80周年記念誌の編集に携わっている鈴木陽子さんだ。

 平良仁雄さんは鈴木さんを信頼しているのだろう。誠実に包み隠さず自らの人生を語っている。9歳で愛楽園に強制収容され、差別や偏見に悩まされながらも病と闘い、入退所を繰り返す。奥さんを失う失意の中でも、今日までを必死に生きてきた人生の軌跡を分かりやすい言葉で丁寧に語っている。それは国家権力のみならず社会や人々の「ハンセン病」に対する無知からくる人権被害の実態だ。

 平良仁雄さんは語る。「私は長い間、ハンセン病回復患者であることが人に知られることを怖れ、隠れるように暮らしてきた。『らい予防法』が廃止されても私の心の傷が癒えることはなかった」と。そしてなお語る。「私は体が動く限り今後もガイドを続けたい。一生をささげても悔いはない」と。この境地に至る平良仁雄さんの言葉は、私たちに多くのことを教えてくれる。

 巻末には山城紀子さんの解説もある。文中には読者の理解を助けるための丁寧な脚注もある。さらに平良仁雄さんの人柄を浮かび上がらせるために、子どもや友人たちの証言もある。平良仁雄さんの軌跡を知ることは、きっとハンセン病の歴史を知ることにもつながるはずだ。貴重な書物の出版を喜びたい。(大城貞俊・作家、大学非常勤講師)

【プロフィール】たいら・じんゆう 1939年久米島生まれ沖縄ハンセン病回復者の会共同代表▽やましろ・のりこ ジャーナリスト、女性や高齢者、障がい問題などをテーマに取材▽すずき・ようこ 2013年沖縄に移住、沖縄愛楽園交流会館の常設展示準備・運営に携わり、現在、同園80周年記念誌を編集中