先日、タクシー運転手の話に耳を疑った。道路を逆走して目的地に行ってほしいと依頼してきた女性客。理由は料金メーターが上がるから。先を急ぐ男性客には、赤信号で停車すると舌打ちをされたという

▼苦笑するしかなかったというが、笑えない。焦る気持ちは分かるが、逆走、信号無視はもってのほか。身勝手な話である

▼大阪の公園で、照明柱が腐食して倒れ、女児が重傷を負った。原因は犬の尿による腐食とみられるという。普段から多くの人が犬の散歩に訪れる場所。付近の土から高濃度のアンモニアが検出された

▼予想できない事故だけに衝撃を受けた。犬の尿が原因と聞いて、日常の「無責任」の行動の連鎖により幼い命が奪われる悲劇を描いた小説『乱反射』(貫井徳郎著、朝日文庫)を思い出した

▼犬の散歩中にふんを片付けない男性、街路樹の検査を怠った樹木員など、さまざまな人々の「身勝手」な行為が複雑に絡み合った結果、ふんが残された樹木が倒れ子の命を奪う。子を失った親は「法律ではなくモラルでは、罪ある人を糾弾することができない」と嘆く

▼大阪の事故の責任の所在は分からない。ただ、尿の処理はどうしたらいいか、普段どれだけの人が気に掛けたことがあっただろうか。何気ない行動がもたらす影響を考えるきっかけになればと思う。(赤嶺由紀子)