東日本大震災から5年を迎える。史上最悪となった東京電力福島第1原発事故の節目に合わせるかのように、原発再稼働を急ぐ政府や電力会社に対し強く警告し、待ったをかける司法の決定が出た。

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の運転禁止を求め、隣接する滋賀県の住民らが申し立てた仮処分で、大津地裁は9日、運転を差し止める決定をした。

 3号機は営業運転をしているが、決定は直ちに効力を持つため、関電は3号機を停止しなければならない。原子力規制委員会のお墨付きを得て稼働中の原発が仮処分決定で停止されるのは全国で初めてだ。画期的な決定である。

 4号機はトラブルを起こし、原子炉は緊急停止中だ。

 山本善彦裁判長は福島原発事故を踏まえ「環境破壊は日本を越える可能性さえあり、単に発電の効率性をもって甚大な災禍と引き換えにすべき事情だとは言い難い」と指摘。関電を「(生命や身体の安全に対する)住民らの人格権侵害の恐れが高いが、安全性の確保について説明を尽くしていない」などと批判した。

 注目されるのは原発所在地以外の住民による差し止めを認めた点だ。避難計画の策定が必要な半径30キロ圏内は滋賀県や京都府の一部を含む。50キロ圏内には近畿1400万人の「水がめ」である琵琶湖もある。いったん事故が起これば致命的だ。

 決定は避難計画について「個々の地方自治体ではなく国主導による具体的で可視的な避難計画の策定が必要だ」と指摘した。国に自治体任せを改めるよう求めたものだ。

■    ■

 福島原発事故は「現在進行形」である。汚染水は増えるばかりで、除染の進(しん)捗(ちょく)状況は地域によってばらつきがある。除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の用地交渉は進んでいない。廃炉は事故後30~40年を目指しているが、不透明だ。1~3号機で「炉心溶融」(メルトダウン)が起きたが、溶け落ちた燃料がどこにあり、どういう状態なのか、皆目分からない。

 東電の無責任体質を示す事実が最近も明らかになった。社内マニュアルには炉心損傷割合が明記され、事故4日目には炉心溶融と判断してしかるべきだったのに、事故を過小評価して炉心損傷と説明し続けた。溶融を認めたのは2カ月後である。マニュアルに5年たって気づいたというが、にわかに信じがたい。

 誰も原発事故の責任を問われていない。被災者らが東電の元会長ら旧経営陣3人を強制起訴に持ち込んだ。大津波を予測させるデータが示されたのに対策を取らなかったのはなぜか。法廷で明らかにしてもらいたい。

■    ■

 原発を基幹電源と位置付け、原発に回帰している安倍政権は、再稼働に前のめりだ。今回の決定が出ても再稼働を推進する考えを変えない。

 日本は世界有数の地震国である。再び大震災が起こる可能性は誰も否定できない。

 脱原発を求める世論は過半を占める。「フクシマの教訓」をくんだ司法の判断を重んじるのであれば、脱原発に舵(かじ)を切るべき時である。