沖縄の施政権が米国から日本に返還された「本土復帰」から15日で、満46年を迎えた。入域観光客数は5年連続で過去最高を更新し、好調な経済を背景に長年の課題だった雇用情勢は改善した。沖縄振興計画も「日本経済再生へのジャンプ台」へと役割を変えようとしている。

5年連続で過去最高の入域客数となった沖縄観光

辺野古新基地建設でK4護岸造成が南側(左)と北側(右)両方から進む現場=1日、米軍キャンプ・シュワブ沖

5年連続で過去最高の入域客数となった沖縄観光 辺野古新基地建設でK4護岸造成が南側(左)と北側(右)両方から進む現場=1日、米軍キャンプ・シュワブ沖

 一方で、全国の米軍専用施設面積の70・3%が集中する沖縄でこの1年、米軍航空機のトラブルや事故が相次いだ。日本側が事故捜査や現場周辺の環境調査を制限され、飛行停止の要求も一顧だにされない。「日本の主権はどこにあるのか」という指摘が上がっている。

<観光>外国人客は120倍に

 2017年度の入域観光客数は前年度比9・2%増の957万9千人となり5年連続で過去最高となった。900万人超えは初めてで国内客、外国客ともに過去最高を更新した。本土復帰した1972年度の55万8593人から約17倍に増加している。観光の様相も、団体客による沖縄戦の慰霊のための旅行から、個人客によるビーチリゾートへと変化していった。

 一方で増加する観光客に対して、沖縄到着後の2次交通の整備や、外国人の救急医療の受け入れ態勢など課題が浮き彫りになってきた。

 国内観光客は前年度比3・7%増の688万7千人で5年連続の増加。外国人観光客は前年度比26・4%(56万2900人)増の269万2千人で10年連続の増加。外国人観光客の増加は著しく、アジア圏を結ぶ格安航空会社(LCC)就航やクルーズ船の寄港回数の増加などを背景に、12年ごろから急増。復帰した72年度の2万1782人から約120倍に増えた。

 県は21年度までに入域観光客数1200万人、観光収入1・1兆円を目標に掲げ、那覇空港第2滑走路の建設や大型クルーズ船専用バースの整備を各地で進めている。一方で、観光客の増加に伴い多くの課題も増えてきた。主な移動手段はレンタカーが中心となり、県の調査によると夏場のピーク時は観光客の約8割が利用している。そのため、深刻な交通渋滞や交通事故が多発している。

<基地>米軍専用施設なお70%

 県内の在日米軍専用施設の面積は2018年1月現在で1万8499ヘクタールで、日本国内の米軍専用施設の70・2%を占める。1972年に本土復帰した際の県内の米軍専用施設面積は2万7862ヘクタールで、復帰後に返還されたのは9363ヘクタールと3割にとどまっている。

 一方、本土の米軍基地は1952年に13万ヘクタールだったのが、沖縄が復帰した72年には1万9699ヘクタールに段階的に縮小された。2018年現在は7823ヘクタールにまで減っている。

 国内の米軍基地の割合は1972年に沖縄約59%で本土が約41%、現在は沖縄が約70%で本土が約30%に変化。復帰から46年が経過しても沖縄の負担が減るばかりか、集中する現状が浮かび上がる。

 沖縄の米軍専用施設は離島を含めた県土面積(22万8098ヘクタール)の約8%を占めており、本島の面積(12万698ヘクタール)に対する比率は約15%に跳ね上がる。

 こうした状況で翁長雄志知事は「米軍基地は沖縄の経済の最大の阻害要因」と指摘し、日米両政府が普天間飛行場の返還の条件とする名護市辺野古の新基地建設に反対している。日本政府は早ければ7月にも辺野古に埋め立て土砂を投入する見通しだが、翁長知事は任期中の埋め立て承認の撤回を明言しており、国と県の駆け引きが続いている。

<人口>東京・埼玉に次ぎ増加率3位

 2017年の県の人口は144万3千人(10月1日時点)で、復帰時(97万人)から比べ約1・5倍に増え、人口増加が続いている。16年比で増加率は0・26%となり、人口が増加した7都県では東京(0・73%)、埼玉(0・28%)に次ぐ3位だった。

 16年の県人口動態統計によると、人口千人当たりの出生率は11・6で、全国より3・8ポイント高い。女性1人が生涯に産む子どもの平均数を表す合計特殊出生率は1・95で全国比で0・51ポイント高く、1985年以降32年連続で全国1位。しかし、人口を維持するため必要な2・07を下回る。

 このため県は14年に「県人口増加計画」を策定し、婚姻率・出生率の向上や子育て支援の充実、雇用創出、離島への定住条件の整備などに取り組んでいる。

<所得>4.9倍の216万6千円に

 県民経済計算によると、1人当たりの県民所得は1972年度の44万から4・9倍の216万6千円(2015年度)に上昇し、過去最高となった。しかし、全国平均の305万9千円を大きく下回っており、ほぼ全国最下位という不名誉な状況が続いている。

 沖縄は戦後、米軍施政権下に置かれたため、基地経済に頼らざるを得ず、社会資本整備や産業振興などの面で本土と大きな格差が生じた。島しょ経済が抱える不利性もある。

 だが、県内経済は入域観光客の大幅な伸びなどを背景に着実に成長。「沖縄21世紀ビジョン」では、21年度の1人当たりの県民所得は全国中位の271万円に増加すると見込んでいる。

<労働環境>27年ぶり失業率3%台

 2017年の完全失業率は3・8%で、1990年以来27年ぶりに3%台を記録した。72年の3・0%、73年の3・5%に次ぐ低い数値となった。県内景気の拡大、沖縄観光や建設業の好調による雇用の増加が改善につながっている。だが、非正規雇用率の高さや長時間労働、低賃金といった課題も顕著で、雇用の「質」の改善への取り組みが焦点となっている。

 2017年の就業者数は69万1千人で、復帰時(1972年、35万9千人)から92%も増えた。だが、雇用者のうち、非正規で働く職員は23万3千人で、その割合は40・4%と全国17年度平均の37・5%を2・9ポイント上回っている。

 17年度の県内有効求人倍率は1・13倍と、5年連続で過去最高値を更新。しかし、同年度の正社員の有効求人倍率は、0・49倍と全国の同倍率1・03倍の半分以下で、正社員の雇用拡大に向けて改善が急がれる。

<予算>ピークは大田県政の4713億円

 沖縄の本土復帰を受け、本土との格差是正や自立的発展のため、政府は沖縄開発庁(現内閣府沖縄担当部局)を設置、各省庁の予算を一元化した。内閣府によると、復帰後から2018年度当初予算までの累計で、沖縄関係予算は約12兆5千億円投じられている。

 予算額は復帰以降増え続け、ピークは1998年度、大田昌秀県政時の4713億円。2000年代は全国的な財政縮小で減少傾向が続き、11年度には2317億円にまで下がった。

 一方、県は10年3月、県民が望む30年の将来像を描いた「沖縄21世紀ビジョン」を策定した。民主党政権の12年度、沖縄振興計画の策定主体が国から県に変わり、同ビジョンの実現に向けた基本施策などを示す新たな振計「沖縄21世紀ビジョン基本計画」が同年度から開始。使途の自由度が高い沖縄振興推進交付金(一括交付金)も導入された。

 自民党政権の13年度からは再び当初予算ベースで3千億円台に。安倍晋三首相は名護市辺野古の新基地建設に必要な埋め立て申請を承認した当時の仲井真弘多知事に、21年度まで3千億円台の予算額を確保する方針を確約した。

 しかし、新基地建設に反対する翁長雄志知事の就任後は減少傾向へ。18年度の当初予算は3010億円で、前年度比140億円減少。一括交付金170億円減の影響が大きかった。

 一方、10年を期限とする第5次振計が21年度で期限のため、県は次期計画を見据えて沖縄振興の成果や課題を整理する総点検の作業に18年度から着手した。早ければ19年度途中から次期計画の素案策定作業に入る。富川盛武副知事が統括する内部のチームが、中長期的な視点から沖縄の振興にとって重要性の高い課題や施策などを洗い出し、次期振計に反映させる「新沖縄発展戦略」を今秋にもまとめる方針だ。