2011年3月11日、私たちは想像をはるかに超える自然の驚異を目の当たりにした。

 東日本大震災による死者は10日現在で1万5894人に上り、行方不明者が2561人もいる。避難生活での体調悪化や自殺による震災関連死は3410人を数える。

 節目の日に犠牲者の冥福を祈るとともに、「震災を忘れないで」と訴える被災地の人々の思いを心に刻みたい。

 あの日から5年がたったが、「3・11」が進行中であることを、先月、公表された国勢調査が浮かび上がらせた。

 震災後初めての調査を、前回10年と比較すると、宮城県女川町で37%、岩手県大槌町で23%も人口が減るなど、被災地の人口減少が著しい。

 福島第1原発に近い大熊、双葉、浪江、富岡の4町は人口「0」の数字が並び、収束しない事故を映し出した。

 震災と原発事故により、いまだ17万人余の人たちが、自宅以外での生活を余儀なくされているのが現実だ。避難が長引けば長引くほど避難先で定住する人が増え、その傾向は原発事故による健康被害を心配する子育て世代に強い。結果、被災地では人口減と高齢化がこれまでにないスピードで進んでいる。

 災害公営住宅の整備の遅れも、故郷への帰還を断念する要因となっている。阪神大震災では震災から5年で仮設住宅がゼロになったが、岩手、宮城、福島の3県では今も6万人近い人たちがプレハブの仮設住宅で暮らす。

 住まいの課題と健康不安が、復興のハードルを高くしている。

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 時間の経過とともに、仕事を再開し、住宅を再建し、新しい生活を送る人と、生きがいや仕事を失うなど、さまざまな事情から厳しい生活を強いられる人たちの復興格差も目立ってきた。

 仮設住宅での「孤独死」は、昨年末までに202人。住まいを確保した人たちの退去により空き室が増え、ひとりで暮らす高齢者への目が届きにくくなったためという。

 震災による失業など親世代の困難が、子どもの成長にも影を落としている。

 岩手、宮城、福島の3県では、行政の就学援助の対象となる小中学生が、震災を境に10%から15%以上へと高い水準で推移している。中学3年生が将来の進学先として「大学以上」を挙げた割合が、全国と比べ1割低いという調査結果もある。

 保護者の生活再建が進まなければ、被災地で教育格差が広がることになりかねない。

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 人口減少、高齢化、子どもの貧困などは、日本全体が抱える共通の課題である。

 政府は被災地を地方創生のモデルにと意気込むが、それを成功させるためには復興のスピードアップと、地域の実情に応じたより細やかな政策の実施が求められる。

 インフラ整備とともに、被災者一人一人が抱える課題に寄り添った生活支援を復興の両輪とすべきだ。

 生活支援で重要なのは、コミュニティーの活性化や被災者の孤立を防ぐ「心の復興」である。