東日本大震災の発生から11日で5年を迎える。全国的にも防災意識が高まる中、沖縄県内では電力・ガス、観光業界、IT企業などが防災・減災の取り組みを進めている。震災を教訓にした各業界の対策を紹介する。

総合防災訓練で被災状況などの情報収集などに取り組む沖縄電力の職員=2015年9月、浦添市の沖縄電力本社(同社提供)

ザ・ブセナテラス敷地内に設置されている海抜表示と避難経路案内=名護市(同ホテル提供)

総合防災訓練で被災状況などの情報収集などに取り組む沖縄電力の職員=2015年9月、浦添市の沖縄電力本社(同社提供) ザ・ブセナテラス敷地内に設置されている海抜表示と避難経路案内=名護市(同ホテル提供)

<電力・ガス>災害対策・復旧工程を検証

 電気やガスなど生活インフラの減災、復旧対策も進んでいる。

 沖縄電力は東日本大震災後の2011年3月、社長を委員長とする災害対策検証委員会、下部に四つのワーキンググループを設置。地震や津波、台風などの災害を想定し、15年末までに計23回の会合を開いた。県のハザードマップに基づき設備被害を予想。電力設備の災害対策や復旧シナリオ、後方支援のあり方を検証し、具体化に取り組んでいる。

 沖縄本島全域が停電した場合の起動電源として、吉の浦火力発電所(中城村)内に、多様な燃料で発電できるマルチガスタービンを整備。当初計画(海抜4メートル)から高い位置(同7メートル)に設置した。石垣島では廃止する予定だった石垣発電所を休止扱いで存続。海沿いにある石垣第二発電所の津波被害に備える。

 毎年9月の総合防災訓練も、計画通りに訓練を進める「シナリオ型」から、予想外の事案を入れ込む「ブラインド型」にシフト。より実践的な内容を取り入れており、同社防災室の仲里忠明次長は「緊張感を維持できるよう、今後も訓練内容を充実させたい」と話す。

 那覇市を中心に6市町村で約663キロの配管網を持つ沖縄ガスも、供給エリアを五つのブロックに分けて早急な復旧に備える。金属製が主流だった配管を耐震性が高いポリエチレン(PE)に切り替えを進め、PE管の普及率は全国平均を上回る水準。一定の震度を感知し、ガス供給を遮断するマイコンメーターの普及も進んでいるという。

<観光業界>水没予想 避難に活用

 東日本大震災後、県内の観光業界でも防災意識が高まっている。対策の強化を「安心・安全な沖縄観光」という質の向上に結び付ける考えが広がり始めた。県は2月、観光への被害低減を目的に、災害別に自治体や事業者らが取るべき具体的な行動指針を明示した「観光危機管理実行計画案」をまとめた。地震や津波などの自然災害、新型インフルエンザといった健康危機など5種類に分け、発生時から時系列で必要な対応策を細かくまとめ、自治体と事業者による連携を促す。

 観光業界ではザ・ブセナテラス(比嘉建己支配人)が独自に津波の危険性を表示したハザードマップを作成。ホテルのある名護市の部瀬名岬一帯を対象に、津波の高さに応じて水没が予想される地域を明示、避難訓練で活用している。震災以降、津波に対する警戒意識が高まり、従来の地震対策と併せて活用することで防災強化につなげる。

 県内ホテル大手のかりゆし(當山智士社長)は4月から、非常時に4カ国語でメッセージが流れる拡声メガホンを導入する。災害が発生した際にホテルやビーチの外国人観光客にも対応できる新たな取り組みを始める。當山社長は「日ごろの訓練に重きを置く姿勢は変わらない。新たなツールをうまく活用することで対策の強化につながる」と語った。

<IT企業>子の居場所を保護者へ

 アプリ開発などを手掛けるワイズバンク(宜野湾市、奥浜正樹代表)は、災害時に子どもたちの避難先情報を保護者の携帯電話に一斉送信する防災情報サービス「園児ココ」の普及に取り組んでいる。専用端末のひもを引くだけで、子どもたちの位置情報と避難先がメールで一斉送信される簡単な仕組みが評価を得て、東日本大震災で被災した宮城県山元町など県内外の保育園50カ所で導入されている。

 震災を機に同社が2012年に開発。被災地では、子どもたちが避難して誰もいない保育園に迎えに行った保護者が津波にのまれたり、保護者の迎えを保育園で待っていた子どもたちや保育士らが被災したりするケースがあった。

 奥浜代表は「情報さえあれば、こんな不幸はなかったはずだ」と胸を痛めたという。

 避難できても、避難所があちこちにできるため、保護者は歩いて子どもを探し回り、3日がかりで再会できた事例もあった。

 奥浜代表は「災害が起きたら、1秒でも早く逃げることが重要。安全を確保した後、位置情報を頼りに再会できる仕組みをつくりたかった」とする。「日本全国で災害は起こりうる。サービスの普及で、防災に役立てたい」と話した。

 問い合わせは同社、電話098(963)7799。