少しやつれた印象を受けたものの、淡々とした口調で病状を語り、「知事としての責任を全うしたい」との強い意志を示した。

 膵臓(すいぞう)の腫瘍の摘出手術を受け入院していた翁長雄志知事が15日、退院し、約1カ月ぶりに登庁した。

 県庁で開いた記者会見ではステージ2の膵臓がんで、切除した腫瘍は約3センチだったことなどを説明した。今後は定期的に通院し、再発や転移を抑える治療を続けるという。

 埋め立てのための土砂投入など新基地建設が重大局面を迎えようとしている中、秋に予定されている知事選に健康問題はどう影響するのか。

 会見では、「1日1日公務をしっかりこなしていく」と述べ、出馬に関する質問には答えなかった。

 知事の仕事は分刻みの激務である。重い判断を迫られることも多い。公務復帰後、すぐに6月議会、慰霊の日の式典などが待っている。抗がん剤治療を受けながら、どう両立させるのか。

 翁長氏は那覇市長だった2006年、胃がんが見つかり、胃の全摘手術を受けている。2度目となるがん手術で「健康不安」が取り沙汰されるのは避けられそうにない。

 任期は全うできたとしても次の4年間、県政の舵を取るのは厳しいのではないかとの憶測も飛ぶ。

 復帰後に判断するとした埋め立て承認撤回も不透明さが増してきた。

 知事選対応は待ったなしである。県政与党は知事本人の意向や県民の声を丁寧に聞き取り、適切に判断すべきである。

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 今のところ与党や労組などでつくる知事選の調整会議は「翁長氏擁立」の姿勢を崩していない。

 翁長氏を支持する企業や保守中道を中心とする県議、市町村議員らが新グループを結成する動きもあり、2期目を前提にした体制再構築も進む。

 一方、野党自民党は今月中にも候補者を決める予定だ。名護市長選での勝利を追い風に、政府・与党との連携を強化しながら、「県政奪還」に向けた動きを加速させている。

 今回、仮に翁長氏が不出馬となれば、埋め立て承認撤回の権限行使は難しくなるのではないか、との見方も浮上している。

 反対派の中には、出馬、不出馬に関係なく、土砂投入が始まる7月を念頭に撤回すべきだとの考えも根強い。

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 翁長氏は、胃の全摘手術を受けた後、残りの人生を「沖縄県民の心を一つにする政治の実現」に尽くす決意をしたと自著に記している。

 4年前の知事選で繰り返した「イデオロギーよりアイデンティティー」は、県民が心を一つにする「オール沖縄」体制構築の訴えでもあった。

 翁長氏は政府・自民党から激しい批判や圧力を受けながらも、これまで基本姿勢がぶれることはなかった。

 しかし新基地建設を巡る選挙公約の実現はまだ道半ばである。出馬するにせよ、後継者を立てるにせよ、イバラの道は続く。