私らしく、はたらく(19)吉戸三貴

 銀座のホテルでセミナーを終え、懇親会に向かう準備をしていたら、参加者の女性Aさんが駆け寄ってきました。「あのー、実は、会社を辞めようか迷っているんです」と、今にも泣きだしそうです。少し時間があったので、個別の質問という形でお話を伺うことにしました。

イラスト・具志堅恵

 「会社で嫌われ居場所がない。今の場所ではもう働けない」と言うAさん。転職相談のように聞こえますが、嫌われているという根拠がいまひとつハッキリしません。そこで、もう少し詳しく聞いてみると、シンプルに解決できる課題を悪い想像で膨らませ、必要以上に悩んでしまっていることがわかりました。

 始まりは、小さなミス。上司に提出した見積書に間違いがあり、訂正するように言われたのです。普通に考えれば、謝って正しいものを再提出すれば良いだけです。ところが、チームリーダーになったばかりの彼女は、上司を失望させたに違いないと思い込んでしまいました。「リーダーの資質を疑われた(はず)」「同僚からの視線も冷たい(気がする)」とネガティブな想像を重ね、ついには、会社を辞めるべきだとまで思い詰めるようになったのです。

 私が「それは、衣だけが大きいエビの天ぷらみたいな状態ですね」と言うと、Aさんはきょとんとしています。「小さなエビ(事実)に、たっぷりの衣(悪い想像)がついているんです。計算ミスは事実ですが、他はすべて想像にすぎません。『すみません、次から気をつけます』で済む話だと思いますよ」。そう付け加えると、Aさんは「確かにそうですね!私、エビ天になってたんだ…」と、笑顔をみせてくれました。

 これまで、たくさんの働く女性の相談を受けてきましたが、真面目で責任感が強い人ほど、無意識に自分を追い込む傾向があると感じています。

 失敗して落ち込んだら、少し冷静になって、悩みがエビ天のように膨らんでいないか考えてみましょう。いらない衣を外すこつは、事実と想像を分けること。例えば、「事実」は、見積書の計算間違いを修正し上司に再提出する必要がある、「想像」は、上司からリーダー失格だと思われている、同僚から冷たくされているなどです。それぞれ紙に書いて分けてみると、頭を整理しやすくなります。(コミュニケーションスタイリスト)